国境を越えた役務提供に対する消費税(その1)
平成27年10月1日以降、国境を越えた役務の提供に関する消費税の取扱が大きく変更になります。「リバースチャージ方式」が導入されるとか、いままで消費税がかかっていなかったサービスに消費税がかかるようになるとかいう漠然とした内容は理解していますが、T&A masterのNo.593の「国内事業者のための電子取引に係る消費税Q&A」という記事でポイントがまとめられていたので確認していくことにします。
1.新たに消費税が課税されることとなる取引は?
消費税法の改正により、「電気通信利用役務の提供」に関する内外判定の判定基準が、従来の役務提供者の所在地等から役務提供を受ける者の所在地等で行うとされました(消法4③三)。
これにより、国内事業者が国外事業者から受ける「電気通信利用役務の提供」は、平成27年10月1日以降に消費税が課税されることとなります。
「電気通信利用役務の提供」とは、資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供(利用許諾を含む)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供を意味します(消法2①八の三)。
具体的には、以下のようなものが該当することになります。
- 電子書籍・電子新聞・音楽・ソフトウェアなどの配信
- クラウド上のソフトウェアやデータベースなどを利用させるサービス
- インターネット等を通じた広告の配信・掲載
- インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス
- インターネットを介して行う英会話教室
2.事業者向け取引と消費者向け取引とは?
「リバースチャージ方式」という単語のインパクトが強く、平成27年10月1日以降に国内事業者が国外事業者から受ける「電気通信利用役務の提供」にはすべてリバースチャージ方式が適用されるかのように考えてしまいそうですが、当該取引が「事業者向け取引」であるか「消費者向け取引」であるかによって、申告納税の方法が異なります。
「リバースチャージ方式」が適用されるのは「事業者向け取引」のみで、「消費者向け取引」の場合、申告義務を負うのは国外事業者となります。
「事業者向け取引」とは、役務の性質や取引条件等から、役務提供を受ける者が通常事業者に限られる取引を意味します(消法2①八の四)。
「消費者向け取引」は、上記の「事業者向け取引」以外の取引ということになります。具体的には、「国外事業者が国内事業者または消費者に対して、電子書籍・電子新聞・音楽・映像などを配信する取引が該当します」(T&A master No.593)。
そうだとすると、国内事業者と消費者の双方に提供されるサービスがすべて「消費者向け取引」となってしまいそうですが、「役務の性質や取引条件等」から役務の受け手が通常事業者に限られるものは「事業者向け取引」に該当するため、個別契約でサービスの提供を受ける者が事業者であることを明らかにして行われるような場合には、事業者向け取引に該当することになります。
また、役務の性質から「事業者向け取引」と判断されるものには、ネット広告の配信が該当します。
前述の通り「事業者向け取引」に該当するか「消費者向け取引」に該当するかによって、誰が申告義務を負うかが異なりますが、サービスの受け手である国内事業者の観点からすると、いずれに該当するかによって仕入れ税額控除の取扱いが異なることになります。
この点については次回とします。
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