固定資産税価額が不明な場合の社宅家賃の考え方
税務通信3361号の<税務相談>に「源泉所得税《社宅家賃の経済的利益の取扱いについて》」という記事が掲載されていました。
この相談内容の一つに「地方の支店は社宅といってもほとんどが借上社宅となっています。算式による通常の賃貸料の額による場合,固定資産税の課税標準額の把握に苦労しています。算式以外の他の方法によって合理的に見積もった額により算出しても問題ないでしょうか。」というものがありました。
借上社宅の家賃については、家賃の上限を設定して家賃額の50%を会社が補助するという運用も多いように思いますが、採用活動上なるべく魅力的な制度にしたい等々、様々な理由により税務上課税されない範囲で従業員の負担額を極力小さくしたいというケースもあります。
その際、登場するのが所得税基本通達36-45で定められている「通常の賃料」の計算式です。以下の計算式で計算される「通常の賃料」以上の金額を徴収していれば、従業員に対して経済的利益を供与したとはみなされないとされています。
一般的に上記の計算式で計算される金額は賃料の50%よりもかなり小さい金額になると言われています。しかしながら、上記の質問にもあるとおり、計算式にある「固定資産税の課税標準額」を把握するのは通常困難です。この点については、税務通信の記事においても「借上社宅の場合には、プライバシーや個人情報保護等の問題もあり固定資産税の課税標準額の把握が困難であったり、地方税当局から入手するにしても数が多くなると手間を要します。」と解説されています。
このような場合にどうするかですが、上記記事では「例えば、対象となる社宅と状況の類似する社宅の固定資産税の課税標準額に比準する価額を基として計算する方法( 所基通36-42 (3)参照)や過去に入手した建物の固定資産税の課税標準額,地価動向の推移や床面積、設備、立地の状況、築後年数等を勘案して見積もった金額を社宅の賃貸料として徴収することも一つの方法です」とされています。
算式によらない他の方法で計算した金額は通常の賃貸料の額には該当しないため、経済的利益として追徴を受けるリスクを負う覚悟が必要とされている点は注意が必要ですが、結局のところ従業員から賃料をどれだけ徴収するかは会社の任意であり、結果的にそれが「通常の賃貸料の額」以上であれば経済的利益はないものとされ、そうでなければ経済的利益について課税されるというに過ぎないという割り切りも必要だと思います。
最後に「通常の賃料」を計算する際に使用される0.2%および0.22%は何なのかですが、計算式制定当時に地代家賃の構成要素と考えられる公租公課、損害保険料、修繕費、減価償却費、資本利子等の費用項目ごとの固定資産税の課税標準額に対する比率を合計して求めたものとのことです。さらに12円は修繕費として0.2%の定率分ではカバーできない分を,1坪当たりの定額分の修繕費として加算したものとのことです。
今まで使用されている率や12円の根拠が何なのか気になっていたので、すっきりしました。
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