法人税申告書勘定科目内訳明細書の作り方(その2)-仮払金・貸付金
今回は”法人税申告書勘定科目内訳明細書の作り方(その1)”の続きとして、「新版 記載例でわかる 法人税申告書 プロの読み方・作り方 (別表/勘定科目内訳明細書/法人事業概況説明書のチェックポイント)」を参考に「仮払金(前渡金)の内訳書」から確認していきます。
4.仮払金(前渡金)の内訳書
そもそも「仮払金(前渡金)」という括り自体が不思議な感じがする内訳書ですが、税務当局としては、「仮払金」であろうと「前渡金」であろうと、何らかの先払いをしているものは怪しいと考えているということなのかもしれません。
そうだとすると、前払金、前払費用、立替金などの勘定残高がある場合はどうするのだろうという点が気になります。
この点、上記の書籍では、”「仮払金(前渡金)の内訳書」については、税務署で配布されている指定様式だと行数が少ないため、記載すべき数が多いと書き切れないことがあります。また、「そもそも立替金や前払費用などを書くことを想定して作られていないから記載する必要はない」などという意見もあります”と述べられています。
その上で、同書では、”決算書の貸借対照表に計上された勘定科目については、重要性の乏しいものを除き、勘定科目内訳明細書にその内容をきちんと記載しておくことが、やはりミスのない決算書、申告書を作成するという観点からも望ましいと考えられます。”と他の勘定科目についても重要であれば記載することが推奨されています。
この内訳書のフォーマットは以下のようになっていますが、10行程度となっており、売掛金(未収入金)の内訳書と比較すると「法人・代表者との関係」を記載する欄が設けられているという特徴があります。
このような点を踏まえると、「そもそも立替金や前払費用などを書くことを想定して作られていない」という意見も一理ありそうですが、「仮払金」として処理すべきものを、「前払金」という科目で計上すれば内訳書の作成は不要となると解釈するのはやはり無理があるように思います。
したがって、後ろ暗い点がないのであれば、多少手間は増えますが、前払金、前払費用、立替金などについても、この内訳書かあるいは「売掛金(未収入金)の内訳書」に記載したほうが、税務署からは不必要な興味を抱かれずにすむのではないかと思います。
<記載上の注意点>
脚注に記載されている注意点は以下の三つです。
- 「科目」欄には、仮払金、前渡金の別を記入する。
- 相手先別期末残高が50万円以上のものについては、各別に記入する。ただし、役員、株主及び関係会社については、期末現在高が50万円未満であってもすべて各別に記入する。
- 「取引の内容」欄には、例えば「機械設備の購入手付金」、「仮払税金」等と記入する。
売掛金(未収入金)の記載上の注意事項と比べると、50万円未満のものについて、その他として一括して記載するという要請はない一方で、役員、株主及び関係会社に対するものはすべて記載することが求められているという点が異なります。
件数が多い場合は、どうせ記載するのであれば「その他(〇件)」などとして、BS残高と合計金額が一致するようにしておいたほうが見栄えはよいと思います。
5.貸付金及び受取利息の内訳書
貸付金及び受取利息の内訳書のフォームは以下のようになっています。
脚注に記載されている事項は以下の三つです。
- 相手先別期末残高が50万円以上のものについては、各別に記入する。ただし、役員、株主及び関係会社については、期末現在高が50万円未満であってもすべて各別に記入する。
- 期末残高がなくても期中の受取利息が3万円以上あるものについては各別に記入する。
- 「利率」欄には、同一の貸付先に対する利率が2以上ある場合には、そのうち期末に近い時期における受取利息の利率を記入する。
この内訳書も国税庁のHPに掲載されているフォーマットでは7行とあまり多く記載が生じることが想定されていない内訳書ですが、役員や株主等に対する貸付金は金額にかかわらず記載する必要があるという点には注意が必要です。
さすがに、残高と利率を記載して、未収利息を計上していないことはないと思いますが、未収利息については、売掛金(未収入金)の内訳書にきっちり記載していたほうがよいと思います(税務署はきちんと受取利息が計上されているのかに興味があると思いますので)。
また、記載方法とは直接関係ありませんが、役員等に対する貸付金の利率は税務当局が興味を持ちやすい部分ですので、適切なレートを設定するように注意が必要だと考えられます。