この会社の退職給付債務が1兆円超!!
2016年3月期の有価証券報告書の提出が進んできたので、退職給付債務の割引率で0%を採用した会社がどれくらいあるのかと確認したところ、以下のような開示が目にとまりました。
全くもって予想外の金額です。何度か数え直してしまいましたが、平成28年3月末のPBO残高が1兆3,387億円です。
一部で過去の割引率の妥当性が疑問視されている東芝ではありません。ちなみに平成28年3月末の東芝のPBOは約1.8兆円、日立製作所の成28年3月末の確定給付制度のPBO残高は2.4兆円となっています。
というわけで、上記のような残高水準は、東芝や日立に並ぶ大企業レベルです。さて、この会社はどこでしょう?
正解は、株式会社ビジネスブレイン太田昭和でした。コンサル会社のため、ものすごい退職金をもらえるのかと連結BSを確認してみると、以下のようになっています。
なんだ、本来「千円」を「百万円」としてしまったということのようです。改めて他の注記も確認してみると、退職給付の注記だけ単位が「百万円」になっていました。これだけ「百万円」という単位が記載されていて気づかないのは正直痛いなというのが率直な感想です。
このような間違いは色々な段階で気づく可能性がありますが、監査人が昨年の数値を前期の監査済みの有価証券報告書とチェックして気づかなかったのかなというのが気になったので、もしや・・・。確認してみよう。
まさかとは思いましたが、やっぱり昨年も単位は「百万円」でした。これだと形式的に前年の有価証券報告書と確認しても間違いには気づきません。とはいえ、特段の懐疑心を抱いていなくても、明らかに金額のレベルがおかしいと感じますので、右も左もわからない新人に有報チェックをやらせたといったところでしょうか・・・
おそらく退職給付会計基準が改正され注記内容が変わった時に単位を間違ったと推測されますが、一応いつから「百万円」になっていたのか過去の有報をさかのぼってみることとしました。
更に1年さかのぼってみると平成26年3月期の有価証券報告書では以下のように開示されてます。
というわけで予想どおり、会計基準の改正時に単位を間違って、2年連続でやってしまったということのようです。
単位間違いについては訂正報告書を出せばよいと思いますが、2年連続で同じ間違いが繰り返されるということは、財務報告に係る内部統制の評価上、どのように取り扱われるのかは今後の展開に注目したいと思います。
ちなみに、監査法人は「ひびき監査法人」でした。
(2016年7月4日追記)
EDINETを確認したら、7月1日付けで2年分の訂正報告書が提出されていました。めでたし。めでたし。