包括利益計算書と計算書類の関係
今回の3月決算から、連結財務諸表に対してのみ適用開始となる「包括利益の表示に関する会計基準」により作成が必要となる「連結損益及び包括利益計算書」(1計算書方式の場合)あるいは「連結包括利益計算書」(2計算書方式の場合)と連結計算書類との関係についての確認です。
くどいですが、一応確認しておくと、「包括利益の表示に関する会計基準」は、とりあえず今3月期は連結財務諸表にのみ適用されるので、連結財務諸表を作成していない会社については特に関係しません。
話をもどしますが、会社法の連結計算書類の範囲には包括利益計算書は含まれません。この点については、昨年9月に会社計算規則の改正が行われており、「損益計算書等には,包括利益に関する事項を表示することができる」としていた会社計算規則第95条の規定が削除され、連結包括利益計算書の作成も義務付けられないことになりました。
しかしながら、法務省は「会社が,任意に,参考情報として連結包括利益計算書を作成し,開示することは禁止されていない」としているため、会社が任意に包括利益計算書を作成することは可能です。仮に、包括利益計算書を作成する場合には、1計算書方式を採用するか2計算書方式を採用するかは会社 の任意で決定することができます。
ここからが、少し厄介なところですが、2011年3月31日に日本公認会計士協会が「監査報告書作成に関する実務指針」を改正しており、このなかでは「いわゆる2計算書方式によることが適当と考えられる」(2.連結計算書類に関する監査報告書 (1)無限定適正意見 注3)とされています。
これは、「会社法上、監査対象として要求されている連結損益計算書は、売上高から当期純損益までを構成する項目を表示する計算書のことをいい、包括利益会計基準が定める連結包括利益計算書や連結損益及び包括利益計算書のその他の包括利益の内訳部分は、監査対象ではないとされている。」(上記注3の一部抜粋)ことによります。
つまり1計算書方式によった場合、「連結損益及び包括利益計算書」のなかに監査済みの部分と監査対象外の部分が含まれ、あたかもそのすべてに対して監査意見が表明されているかのような誤解を与える可能性があるので、監査対象外のものが別個作成される2計算書方式の方が望ましいという理屈です。
個人的には、1計算書方式の方がすっきりしており、1計算書方式を採用する会社のほうが多いのではないかと思っていましたが、実際どのような感じになるのかは今後の動向に注目です。
もっとも、有価証券報告書の作成会社ではないけれども、会計監査人設置会社で連結計算書類を作成している会社で、かつ連結包括利益計算書を作成したいという会社でなければ、監査人からしてみてもどうでもいい話なのかもしれません。
なぜなら、有価証券報告書を作成している会社では、会社法で連結包括利益計算書が未監査であるといっても、金商法により実質的には監査されているものと考えられるためです。
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