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出る杭はもっと出ろ!

「過年度遡及会計基準適用後の連結財務諸表及び財務諸表の作成にあたっての留意事項」(その1)

経営財務3058号(2012年3月26日)に金融庁の方が「過年度遡及会計基準適用後の連結財務諸表及び財務諸表の作成にあたっての留意事項」という記事を書いていました。

既に決算が始まってしまっていますが、大きく変わっている点でもあるので確認しておきます。

「連結財務諸表の用語,様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第45号)および関係ガイドラインは、企業会計基準委員会の 「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を踏まえた比較情報制度の導入及び会計方針の変更等に関する注記の新設を織り込んで平成22年9月30日に改正されていますが、3月決算の会社の場合、今回の有価証券報告書からこの改正が影響してくることになります。

大きく変わったのは、従来の単なる過年度の財務諸表に対して「比較情報」という概念が導入された点です。

つまり、「比較情報制度の導入により、今後の有価証券報告書における財務諸表は、前事業年度と当事業年度の2期分の財務諸表という位置づけから、当事業年度の財務諸表及びその一部を構成する比較情報としての前事業年度の情報という位置づけに変更」されています。

比較情報が必要な情報の範囲としては、財務諸表等規則ガイドライン6において以下のように定められています。

1 当事業年度に係る財務諸表において記載されたすべての数値について、原則として、対応する前事業年度に係る数値を含めなければならない。

2 当事業年度に係る財務諸表の理解に資すると認められる場合には、前事業年度に係る定性的な情報を含めなければならない。

上記から、財務諸表のうち数値に関する情報は、基本的に当事業年度の数値に対応する全事業年度の数値(該当する場合には、過年度遡及修正適用後のもの)を記載する必要があるということになります。

一方で、前事業年度に係る定性的な情報は、「当事業年度に係る財務諸表の理解に資すると認められる」かどうかによって、記載するか否かを決定する必要があります。

そして同記事では、比較情報として記載すべき前事業年度に関する注記事項に関して大きく四つの観点で留意すべき事項が取り上げられていました。

その四つとは、

(1)会計方針等に関連する注記事項

(2)特定の勘定科目との関連性の強い注記事項

(3)財務諸表全体との関連性の強い注記事項

(4)性質上比較情報が不要と考えられる事項

です。

今回は、上記のうち(1)会計方針等に関連する注記事項で取り上げられていた事項についてのみ取り上げることにします。

「会計方針等に関連する注記事項」では、さらに三つの項目が取り上げられていました。

①重要な会計方針の注記

②連結範囲等に関する注記

③会計方針の変更等に関する注記

①重要な会計方針の注記

ここは従来と大きく異なる部分で、従来は2期併記で会計方針が注記されていましたが、「前事業年度と当事業年度の会計方針が実際に同一である場合には、前事業年度の会計方針に関する注記を敢えて記載する必要はないと考えられる」とされています。

これは、会計方針は定性的な情報であるため、前述のガイドラインに従えば、「当事業年度に係る財務諸表の理解に資すると認められる」場合にのみ注記が求められるところ、前事業年度について何ら記載しなければ前事業年度の会計方針が当事業年度の会計方針と同一であることを意味するため敢えて記載する必要性に乏しいためです。

本当?と思ってしまいましたが、2012年3月期用のプロネクサスの記載例を見てみると、確かに単年の記載形式になっていることが確認できました。

では、会計方針が変更された場合はどうなるのかですが、この場合は基本的に遡及修正することになり、比較情報が変更後の会計方針で作成されることになるので、前事業年度の会計方針を比較情報として開示する必要はないと考えられます。

さらに「遡及適用に係る原則的な取扱い」が実務上不可能な場合はどうなるかですが、この場合は、財規8条の3の2の規定に従って、会計方針の変更の内容、変更を行った正当な理由、財務諸表の主な科目に対する実務上算定可能な影響額、遡及適用に係る原則的な取扱いが実務上不可能な理由等の詳細な注記が必要となります。したがって、「これにより前事業年度の会計方針の概要が把握できる場合には、やはり会計方針を重ねて注記する必要はないと考えらえる」とされています。

②連結範囲等に関する注記

そもそも、連結の範囲に関する事項、持分法適用の範囲に関する事項及び連結子会社の事業年度等に関する事項の変更は会計方針の変更と取扱われていませんし、これらの事項の差異は「連結の範囲又は元便法適用の範囲の変更に関する注記」(連結財規14条)等によって開示されることから、特に比較情報として前期の情報は不要と考えられます。

しかしながら、「明瞭性の観点から、前連結会計年度における連結の範囲等に関する注記を追加することも有用な場合があるため、前連結会計年度に係る連結の範囲等に関する注記を重ねて行うべきか否かは各社の実態を踏まえて判断する必要がある」とされている点には一応注意が必要ではないかと思います。

③会計方針の変更等に関する注記

従来は会計方針等も2期併記で記載されていたため、前事業年度に発生した会計方針の変更、表示方法の変更、追加情報等の情報は翌事業年度にも開示されていましたが、今後はどうなるのかという点が述べられていました。

結論からすれば、「会計方針等の変更の注記自体の比較情報(前々事業年度から前事業年度の間に生じた会計方針の変更等の注記)は性質上記載不要であると考えられる」ということです。

理由を要約すれば、当期と前期の比較可能性は保たれているからということです。

実務的には、二期分併記したりする手間が省けるので、その点では多少楽になるのかもしれません。

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