「第二会社方式」とは?(その1)
今回のテーマは「第二会社方式」です。
ざっくりと、過剰債務等で経営が行き詰った中小企業に収益性のある事業がある場合に、その部分を切り出して別会社を設立し、残った部分は清算するような手法という理解していますが「会社分割」(後藤孝典著)で第二会社方式について触れられていたので取り上げることとしました。
上記書籍では「第二会社方式」について、否定的な見解が示されているのですが、それはさておき、「第二会社方式」を推している行政側の説明から確認してみることにします。
1.第二会社方式とは
まず、中小企業庁・経営支援部・経営支援課の発行資料によると第二会社方式は以下のように図示されています。
また、第二会社方式とは、「財務状況が悪化している中小企業の収益性のある事業を会社分割や事業譲渡により切り離し、他の事業者(第二会社)に承継させ、また、不採算部門は旧会社に残し、特別清算等をすることにより事業の再生を図ります。この第二会社方式は中小企業の事業再生に有効な再生手法です。」とされています。
なお、中小企業庁が発行している平成24年中小企業施策ガイドブックの『「第二会社方式」による事業再生に関する支援』の項で記載されている定義もほぼ同一のものとなっています。
2.第二会社方式のメリット
第二会社方式のメリットとしては、以下の二点が挙げられています。
・金融機関の協力により、債務免除や税務上の課題も解決可能
・想定外債務のリスクが遮断され、スポンサーの協力が得やすい
3.第二会社方式を利用したい場合の手続き
第二会社方式を利用したい場合は、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法に基づき「中小企業承継事業再生計画」を作成して経済産業大臣の認定をうける必要があります。
この認定を受けると、営業上必要な許認可等を承継できる特例、税負担(登録免許税や不動産取得税)の軽減措置、金融支援を活用することができるとされています。
4.産業活力再生法による中小企業承継事業計画の認定要件
産業活力再生法39条の2第4項では以下のすべてに適合する場合に主務大臣が計画を認定するとされています。
(1)中小企業承継事業再生計画が基本指針に照らし適切なものであること
(2)中小企業承継事業再生計画に係る中小企業承継事業再生が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること
(3)中小企業承継事業再生計画に係る中小企業承継事業再生により、承継する事業にかかる特定中小企業者の経営資源が著しく損なわれ、または失われるものでないこと
(4)中小企業承継事業再生計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと
(5)中小企業承継事業再生計画が特定中小企業者の取引の相手方である事業者の利益を不当に害するおそれがあるものでないこと
上記の条文からは具体的にどのようなことかがわかりにくいですが、この点については、中小企業庁作成の広報冊子「中小企業の再生を支援します」において、以下のような具体例が示されています。
・会社分割又は事業譲渡により第二会社へ事業を承継し、承継後2年以内に旧会社を清算すること
・計画終了時点で①有利子負債/ CF≦10、②経常収支≧0
・旧会社の承継される事業に係る従業員の8割以上の雇用を計画実施期間において確保すること
・旧会社の取引先企業の売掛債権等を毀損させないこと
さらに、前述の中小企業庁・経営支援部・経営支援課の発行資料によると、「中小企業再生支援協議会等の公正な債権者調整プロセスを経ていること」および「従業員との適切な調整(労使間での十分な話し合い)が行われていること」についてはそれぞれ以下のようなことが求められています。
①「中小企業再生支援協議会等の公正な債権者調整プロセスを経ていること」とは?
「債権者調整が適切になされているものを認定するため、公正性が担保されている以下手続を経ていることを要件とする」として以下の手続きが明示されています。
・再生支援協議会
・RCC企業再生スキーム
・事業再生ADR
・企業再生支援機構
・私的整理ガイドライン
・民事再生法 など
②「従業員との適切な調整(労使間での十分な話し合い)が行われていること」とは?
この点については以下の考慮点が示されています。
・計画の主たる目的が従業員の削減でないか
・承継事業の選定が恣意的でないか
・第二会社に移行しない労働者の選定が恣意的でないか、その後の雇用の安定には十分な配慮があるか
・第二会社に移行した労働者の労働条件が切り下げられていないか
上記①で挙げられているスキームについてもどのようなものか簡単に確認が必要だと思いますが、長くなりましたので、今回はここまでにします。
日々成長。