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株主総会の入場者の所持品検査は認められるか?

今回は株主総会を開催する際に、総会に参加する株主の所持品検査を実施することが認められるかについてです。

この点について争われた裁判例が、九州電力事件です。結論からすると、この裁判では総会出席者の所持品検査が適法と判断されています。

この裁判の判旨は以下のとおりです。

株主総会の会場内でみだりに横断幕を張ったり、ゼッケン着用やビラ、チラシの配布行為がされると、議場の平穏が乱され、円滑な議事進行の妨害となるおそれがあることは否定できない。…本件総会においても会場内に(横断幕やゼッケン等)が持ち込まれる可能性が十分に考えられる状況にあったといえる。
 かかる状況において、秩序ある株主総会の議事を運営すべき立場にあるY会社がバックを一時的に預けるよう要請し、これに応じない者については、バッグの中にこれらのものが入っていないことを確認しようとすることは、不当なものとはいえない。また、Y会社は、手荷物預けの要請をXらグループに対してだけでなく会場に入場しようとした者に対して一様にしており、本件総会に供する資料の入ったバッグについては、その中身を確認したうえで会場内への持込みを認めており、この点においても不当なところはない。
 次に、会場内において不特定の株主が不規則に写真撮影を行うことは、プライバシーの問題から株主相互の不快感や軋轢の原因となりかねず、議場の平穏を乱すおそれがあるほか、自由な質疑討論の妨げにもなりかねない。したがって、Y会社が会場へのカメラの持込みを禁止することにしたのは、それによって株主にも特段の不利益は生じないので、Y会社の有する議事運営権の最良の範囲内にとどまるものであって、不当なものとはいえない。(福岡地裁判平成3年5月14日判夕769号216頁)

上記の判例では、所持品検査が適法とされていますが、無条件に認められているというわけではない点には注意が必要です。すなわち、「角材や竹刀といった凶器となるような物や、ハンドマイクやスピーカーなど、総会に持ち込む必要が明らかに認められず、総会の議事運営の進行を害する危険性が髙い物については、会社側で発見次第、その持込みを制限しても問題ないと考えらえる」一方で、「ビラやチラシ等のように、その所持が直ちに議事の運営を害するとはいえない物の持込みを制限することは慎重に検討する必要があろう。」(重要判例で読み解く 株主総会の運営実務 TMI総合法律事務所)とのことです。

上記の判例の前提としては、総会直前にXらが横断幕やゼッケン等を使用して小集会を行っていたことや、前年度の総会会場でビラを配布した事があるといった事実があったことから、ビラなどが持ち込まれる可能性があり、会社としてはバッグの一時預けを要請し、これに応じない者は中身を確認しようとすることが不当とは言えないと判断されています。

つまり、ビラ等を所持しているだけでは不十分で、それを利用して総会の議事進行が妨げられる可能性が髙いかどうかを勘案しなければならないということのようです。

また、カメラの持込みについては、不特定の株主による不規則な撮影はプライバシー問題から株主相互の不快感や軋轢の原因となりかねず、議場の平穏を乱す恐れがあり、かつ、株主に特段の不利益は生じないことから、こちらも会社の議事運営権の裁量の範囲内にとどまるもので不当とはいえないと判断されています。

しかしながら、最近のスマホの機能を考えると、実質的には携帯電話の持込みを禁止しなけらばならないということになってしまいそうですが、「これらをすべて受付でチェックし持込みを制限することは現実的ではない」ため、「実務的な対応としては、実際に撮影、録画がされ議場が混乱する蓋然性が髙いと判断しうる事情がない限り、総会開始前に、携帯電話の電源を切るように求めるとともに、カメラやレコーダーの使用を禁止する旨のアナウンスをする程度が適当であると解される」(重要判例で読み解く 株主総会の運営実務 TMI総合法律事務所)とされています。

最後に所持品検査の方法については、所持品持込み制限のために所持品検査を行う場合であっても、検査の実施は任意の協力を求める形で入場者全員に一律行う必要があり、強制的に検査するという方法は避けるべきとの見解が示されています。

気にしない人は気にしないと思いますが、一方で総会に出席するのに所持品を検査されることに不快感を感じる株主もいると思いますので、不要なトラブルを避けるうえでも慎重な対応が必要ということになりそうです。

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