監査役へのストックオプション付与の可否
ストック・オプションの導入を考える場合、一般的に付与対象者として考慮されるのは取締役と従業員だと考えられますが、監査役をストック・オプションの対象者とすることも可能かが今回のテーマです。
結論からすれば、監査役をストック・オプションの対象者とすることも可能です。
取締役の報酬については平成14年の商法改正時に固定報酬、業績連動報酬、非金銭報酬として整理されたのに対して、監査役の報酬についてはこのような整理は特に行われていません。
しかしながら「監査役については、非金銭報酬を禁止する趣旨ではないとの解釈が実務上定着しつつあり、非金銭報酬かつ業績連動報酬であるストック・オプションが、平成13年商法改正以降、監査役に対して導入されているという事例は少なくない」(「役員報酬をめぐる法務・会計・税務」田辺総合法律事務所・清新監査法人・清新税理士法人 編著)とされています。
個人的には、監査役にストック・オプションを付与するときちんと仕事をしてくれるのかという気がしてしまいますが、上場企業で監査役にストック・オプションを付与している会社がどれくらいあるのか確認してみることにしました。
試しに決算日を2012年4月1日~2013年3月31日とする有価証券報告書の”ストックオプション制度の内容”で”監査役”を含むものを検索してみると434社がヒットしました。
しかしながら、「新株予約権の割当てを受けた者は、権利行使時においても、当社または当社の関係会社の取締役、執行役員、監査役及び従業員の地位にあることを要する。」というような新株予約権の行使の条件だけで検索にひかかったものも相当数見受けられるので、監査役にストック・オプションが付与されているのは200社~300社程度だと推測されます。
ちなみに、同じ期間を対象として”取締役”で検索してみると1,007社、”従業員”で検索すると662社がヒットしました。いずれも付与対象としている実際の社数とは乖離していると考えられますが、検索ヒット数で比較すると、思った以上に監査役をストック・オプションの対象としている会社はあるというのが現実のようです。
役員退職慰労金の代わりに導入されることが多く、監査役だけ退職慰労金を残すというのも変なので、監査役にもストック・オプションを付与するということになるのでしょうが、仮に自分が株主だとするとやはり違和感は感じます。