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IFRSにおける有給休暇引当金の参考事例

2014年1月15日に日本経済団体連合会から「IFRS任意適用に関する実務対応参考事例」(2014年1月15日版)が公表されました。

その中に有給休暇引当金の参考事例が追加されており、翌期付与が見込まれる有給休暇の取扱いについて疑問点が少しクリアになりました。
IAS19号では、企業は、有給休暇の形式による短期従業員給付の予想コストを、次の時期に認識しなければならないとされています(13項)。

  1. 累積型有給休暇の場合には、将来の有給休暇の権利を増加させる勤務を従業員が提供した時
  2. 非累積型有給休暇の場合には、休暇が発生した時

上記の「累積型有給休暇」は、当期の権利をすべては使用しなかった場合には、繰り越して将来の期間に使用することができるものを意味し、労基法に基づく有給休暇はこれに該当します(法律上1年繰越が認められるので)。

そして労働基準法上は企業は 6 カ月以上の継続雇用、かつ従業員が全労働日の 8 割以上出勤した場合には勤続年数に応じた有給休暇(労基法上最低10日、最高20日)を与えなければならないとされています(労基法39条)。
ここで気になっていたのは、「将来の有給休暇の権利を増加させる勤務を従業員が提供した時」に引当金を認識しなければならないとすると、期中に8割以上の出勤率が確定し特に辞めることが想定されていないのであれば翌期に付与する分を含めて期末に有給休暇引当金を計上することになるのかという点です。

今回公表された参考事例では、有給休暇引当金の計上方法の考え方に大きく三つの考え方があったと述べられています。

  1. 先入先出法アプローチ
  2. 後入先出し法アプローチ
  3. 翌期首付与分も含めるアプローチ

先入先出法アプローチは「有給休暇繰越分のうち翌期消化見込み分については、当期に提供した勤務に基づき付与されたものであるため、当期末に引当計上する。」というものです。米国基準で有給休暇引当金を計上する場合この方法が採用されているのが一般的だったように思います。

次に後入先出し法アプローチは「当期付与分の有給休暇については、当期の労務費に織り込まれており、引当計上はしない。当期付与分を超えて消化されると見込まれる場合のみ、「追加金額」として引当計上する」というものです。
これだけ読むとイマイチ納得できませんが、有給休暇が当期付与されたものから消化されるものと仮定し、前期繰越分の使用が見込まれるような場合には「追加金額」を引当計上しようという方法のようです。当期に付与された年次有給休暇から消化されるという考え方が一般的かは疑問ではありますが、大部分が未消化のまま消滅するような状況であれば、敢えて先入先出法アプローチによって引当金計上するまでもないという考え方はありえると思います。
当該参考事例では「金額の重要性が乏しく、最終的に引当計上しない例がある。」と述べられており、引当計上しないためのロジックとして使用されているのではないかと推測されます。

最後に翌期首付与分も含めるアプローチというのは、「先入先出法アプローチ+α」とされていますが、基本的な考え方は先入先出法アプローチにより、翌期付与分も含めて消化が見込まれる部分を引当計上するというものです。
「将来の有給休暇の権利を増加させる勤務を従業員が提供した時」という部分からすれば、このアプローチが自然なように感じます。

なお、それぞれのアプローチの採用社数は以下のようになっています。
先入先出法アプローチ 2社
後入先出し法アプローチ 5社
先入先出法アプローチ+α 3社

採用社数からすると後入先出し法アプローチが主流のようです。

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