社員食堂の食事代で経済的利益認定-契約方法等に要注意!
T&A Master No564の巻頭特集に「社員食堂の食事代で経済的利益を認定」という記事が掲載されていました。
工場を除き社員食堂があるケースは少ないように思いますが、それにしても気になる内容です。
まず前提となる知識を確認しておくと、使用者が役員または使用人に対して支給する食事の評価は、以下の二つのケースで取り扱いが異なります。
- 使用者が調理して支給する食事
- 使用者が購入して支給する食事
所得税基本通達36-38では以下のように述べられています。
(食事の評価)
36-38 使用者が役員又は使用人に対し支給する食事については、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額により評価する。(昭50直法6-4、直所3-8改正)(1) 使用者が調理して支給する食事
その食事の材料等に要する直接費の額に相当する金額(2) 使用者が購入して支給する食事
その食事の購入価額に相当する金額
さらに、所得税基本通達36-38の2によって、以下に該当する場合には、使用者が役員又は使用人に対し支給する食事についても経済的利益はないとされています。
(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)
36-38の2 使用者が役員又は使用人に対して支給した食事(36-24の食事を除く。)につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36-38により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。
つまり、月額3,500円を上限とするのは(1)でも(2)でも同じですが、経済的利益がないと判定されるベースが直接費の金額なのか食事の購入価額に相当する金額なのかという違いがあるわけです。
さて、上記を踏まえた上で、紹介されていた事案のポイントを確認すると以下のとおりです。
- 受託業者が主食及び副食材料の調達費用を負担する。
- 会社は受託業者に対し、厨房設備を併設する食堂を無償で貸与し、その食堂における水道光熱費等の間接費を負担する。
そして課税当局は、当該事案において、以下の理由から食事の購入と判断し、食事の購入価格と従業員が負担した食券代金との差額が経済的利益になるという判断を下しました。
- 委託契約では、材料費を受託業者が負担すると定められており、材料の調達も受託業者の判断で行われている。会社は、材料の明細や在庫状況について関知しておらず、帳簿にも計上されていない。
- 受託業者からの請求金額は、食事の単価×食数で計算されたものであり、「品名・摘要」欄には「御食事代」と記載されており、食事の購入代金であり材料の購入ではない。
- 上記より、会社は受託業者に対し、従業員に対し食事を支給することを一括して委託していると認められる。
これに対して審判所は、使用者が食事の調理に係る材料費、厨房設備費および水道光熱費等の一切を負担し、調理に係る人的役務のみを外部の業者に委託していた場合には、調理人等が自社の従業員か給食業者の従業員かの違いしかないことから、このような場合の食事は、使用者が調理して支給する食事と同様に評価すべきとした上で、以下のように判断しました。
当該事案では、会社の食堂を受託業者に無償で使用させ、水道光熱費等の間接費を負担しているものの、本件材料費は受託業者が負担することとされ、会社は材料の内訳・金額を一切関知せず、材料の在庫を帳簿書類に記録することもなかったと指摘し、会社が受託業者に調理のみを委託していたとみることはできないとしました。
さらに、覚書により各メニューごとに定めれらていた材料費の金額については、受託業者が材料費を調達する際の目安であり、材料費そのものの金額ではないので、会社が材料費を負担しているとみることもできないとしています。
その上、会社が、従業員の給料から控除していた食事代の従業員負担分を預り金勘定で経理処理し、その金額を受託業者に支払う際に、預り金勘定を減額する経理処理をしていることは、会社が、受託業者が従業員から受領すべき食券代金を受託業者に代わって徴収し、これを受託業者に支払っていたものと認められると判断しています。
上記の判断からすると、社員食堂の場合、最低限材料費については実費での精算しておくことが必要となりそうです。また、従業員が負担する金額を請求金額の項目とするのは避けるべきだと考えられます(調理支給であれば、確かに従業員が負担すべき金額を請求する意味はないと考えられます)。
日々成長