国境を越えた役務提供に対する消費税(その2)
前回の続きで、国境を越えた役務提供に対する消費税についてです。
3.「事業者向け取引」・「消費者向け取引」と仕入税額控除
前回述べた「事業者向け取引」と「消費者向け取引」のうちサービスの受け手側で仕入税額控除が認められるのは原則として「事業者向け取引」のみです。
「消費者向け取引」について仕入税額控除が原則として認められないのは、「消費者向け取引」は国外事業者が申告納税を行うこととされてますが、国外事業者については執行管轄が及ばない国外に所在するため、申告納税が必ずされるとは限らないためとされています。
ただし「消費者向け取引」についても、国外事業者が国税庁長官の登録を受けた「登録国外事業者」に該当する場合には、その登録国外事業者から受けた「消費者向け取引」については、帳簿及び請求書等の保存を要件として仕入税額控除の適用が認められます。
一方で「事業者向け取引」については、申告納税を国内事業者が行うため、国内事業者は、国外事業者に対する支払対価の額(特定課税仕入れ)を消費税の課税標準に加算するとともに、仕入税額控除を行うこととなります。
この場合は、通常の課税仕入と異なり、法令が規定する事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができ、請求書の保存は不要とされています。帳簿への具体的な記載事項は以下の五つです(消法30⑧)。
- 特定課税仕入れの相手方の氏名または名称
- 特定課税仕入れを行った年月日
- 特定課税仕入れの内容
- 特定課税仕入れに係る支払対価の額
- 特定課税仕入れに係るものである旨
通常の課税仕入と異なるのは上記の5を記載する点ですが、「この記載は、事後にその課税仕入れが特定課税仕入れであることが確認できる表示で問題ないようです(例えば帳簿に「特定」と付記するなど)」(T&A master No.593)。
この点については、市販の会計ソフトを使用していれば、消費税法の改正に対応し「特定課税仕入れ」の消費税区分等が設定されることが予想されますので、それほど気にする必要はないのではないかと思います。
4.国内事業者に納税義務がある旨の表示
「事業者向け取引」の提供を行う事業者は、仕入側の国内事業者に対して納税義務が発生することを表示しなければならないとされています(消法62)。したがって、国内事業者としては基本的に消費税の納税義務が発生する旨が表示されているか否かに注意すればよいということになります。
しかしながら、『国内事業者に「事業者向け取引」を提供する国外事業者に義務づけられている「特定課税仕入れを行う事業者(国内事業者)が消費税を納める義務がある旨」の表示の有無は、国内事業者(仕入れ側)における納税義務の成立に影響はありません』(T&A master No.593)とのことですので、「事業者向け取引」であれば国内事業者に納税義務が生じるという点には注意が必要です。
したがって「事業者向け取引」なのか「消費者向け取引」なのかを慎重に判断する必要があります。
5.簡易課税適用事業者の場合
簡易課税制度の適用をうける事業者がおこなう「事業者向け取引」については、事業者の事務負担に配慮する観点から、消費税の申告対象から除外されています(改正消費税法附則44②)。
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