導入する会社が登場してきた譲渡制限付株式とは?
平成28年度税制改正により、役員を対象とした譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)について法人税法損金算入が認められることとなりましたが、そもそも譲渡制限付株式とは何なのかを確認してみました。
1.譲渡制限付株式とパフォーマンス・シェア
譲渡制限付株式とは、一定期間譲渡制限が付された株式報酬を意味します。また、パフォーマンス・シェアとは、中長期的な業績の達成度合いによって交付される株式報酬を意味します。
2015年7月に公表された経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書の考え方によれば、パフォーマン・シェアは一定期間の業績達成により譲渡制限が解除される株式として整理されています。
なお、欧米では、譲渡制限株式に業績達成条件を付したものをパフォーマンス・シェアと定義することが一般的のようです。
2.譲渡制限付株式やパフォーマンス・シェアが日本で導入されていなかった理由
日本でもストック・オプションは役員や従業員に対する報酬制度として広く利用されるようになっていますが、諸外国で利用されていた譲渡制限付株式やパフォーマンス・シェアが日本で用いられていなかった理由は、会社法との兼ね合いによるものでした。
つまり、会社法上、有利発行に該当し株主総会の特別決議が必要となるということに加え、そもそも仮装払込になってしまうのではないかという問題点があり、譲渡制限付株式等は使用されていませんでした。
そして前述の報告書において、報酬として正当に成立している金銭債権を現物出資するという整理がなされたため、仮装払込には該当あたらないことが明確にされました。
有利発行として株主総会の特別決議が必要になるのではという点については、取締役会設置会社では、払込金額を「特に有利な金額」(会社法第199条3項)でない金額にして、取締役会の決議で発行することができるとする見解が示されました。
なお、ストック・オプションと聞くと有利発行ではないかと考えてしまいそうですが、ストック・オプションはすべて有利発行に該当するわけではありません。無償発行であっても有償発行であっても、有利発行か否かは発行時点における当該新株予約権の価値と払込金額との比較により判断されるものとなっています。つまり、発行時のストックオプションの価値と払込金額を比較して有利かどうかという判断が必要となります。
譲渡制限付株式も、払込金額を「特に有利な金額」(会社法第199条3項)でない金額にすれば有利発行にあたらないということですので、発行時には「譲渡制限付株式」の時価を外部の機関に評価してもらう必要が生じると考えられます。
上記のように、会社法上の法的問題がクリアされ、法人税法上も損金算入が認められることとなったことから、3月決算会社の中には今回の総会でこれらの制度導入に向けた議案を株主総会にはかる事例がでてきています。