総会決議事項の登記に「株主リスト」の添付が必要になるのは?
商業登記規則等が改正され株主総会決議事項の登記にあたり株主リストの添付が必要となるという点については、以前”株主総会決議事項の登記に上位10名の株主名簿が必要になりそうです”で取り上げましたが、6月の株主総会での役員改選等にあたり、この点がどうなっているのかを確認しておきます。
結論からすると、株主総会の決議を要する事項の登記に「株主リスト」の添付が必要となるのは、平成28年10月1日からですので、この6月に株主総会をむかえる会社ではまだ登記にあたり株主リストが必要ということはありません。
とはいえ、10月1日以後は、上場会社にかぎらず、中小企業であっても株主リストの添付が必要となりますので、株主リストの準備を進めておく必要はあります。
1.株主リストに記載すべき事項は?
株主リストに記載が必要となる株主は、「議決権の数の割合が高い上位10名」又は「議決権の多い順に順次加算した割合が3分の2に達するまでの人数」のうち、いずれか少ない人数の株主とされています。
したがって、株主が10名以上いでても議決権の2/3以上の保有割合の株主がいれば1名のみの記載でよいということもありえます。
ただし、反対に議決権の多い順に順次加算した割合が3分の2に達しなければ、同率10位の株主が複数いる場合には、10位の株主は全員記載が必要となるとのことです。したがって、場合によっては10名以上の株主をリストに記載しなければならないことはありえます。
株主リストに記載しなければならない事項は以下のとおりです。
- 氏名又は名称
- 住所
- 当該株主のそれぞれの有する株式の数及び議決権の数
- 当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合
なお、株主リストの様式については特に定めはないので、上記事項をExcelやWord等で適当に作ればよいようです。今後「株主リスト」の記載例が法務省で公開される予定とのことです。
2.どの時点の株主を記載するか
株主総会の決議事項の登記に用いられるため、株主リストに記載する株主は当該株主総会で議決権を行使できる株主を記載することとなります。したがって、事業年度末日を議決権行使の基準日としている場合には、事業年度末日時点の株主を記載することとなります。
3.事業報告や有価証券報告書の流用は可能か?
事業報告や有価証券報告書では大株主の状況の記載が求められており、上位10名の株主が掲載されていますが、そのまま流用することは難しいとされています。
ただし、法務省では申請人の負担を考慮して、有価証券報告書等を利用した記載例等を検討中とのことです。
4.株主が個人の場合、住所はどこまで記載するか?
登記のため添付する株主リストの場合は、株主が個人であっても番地までの住所の記載が必要となります。これは有価証券報告書等では株主が個人の場合は、市区町村までの記載で足りるとされてる点と大きく異なるので注意が必要です。
そうすると、登記所で閲覧されることにより個人株主の住所が広く知られてしまうのではないかという点が気になるところです。たとえば、有価証券報告書等で市区町村までの住所しか開示されていない個人株主の住所が登記の「株主リスト」から判明してしまうとすると、個人株主としては気分がよいものではありません。
この点、登記申請書及びその附属書類は、利害関係を有する者がその事由を示して、利害関係及びその事由が相当な場合にのみ閲覧できるとされていますので、個人株主の住所が添付書類の閲覧によって判明してしまうという可能性は否定できませんが、誰でも閲覧可能というわけではありません。
とはいえ、閲覧目的に個人株主の番地までの住所が不要であるのであれば、市区町村までの開示にとどめるというような配慮があってもよいのではないかという気はします。