2016年6月に日台租税条約が発効していました-繰延税金負債の計上額に影響する可能性に要注意
少し前に”日台租税条約の不思議-どうやって実現したか?”というエントリで最近よく見かける日台租税条約について書きました。
ここでいう租税条約とは、正確には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との取決め」のことですが、その中で「公益財団法人交流協会及び亜東関係協会は、この取決めの効力発生のためにそれぞれの地域において必要とされる手続が完了したことを書面により相互に通知する。この取決めは、双方の書面による通知のうちいずれか遅い方が受領された日に効力を生ずる。」とされており、日本側は平成28年度税制改正によって対応が完了しているものの、台湾側での手続きが未了と書きました。
ところが実際のところ台湾側での手続きも2016年6月には完了しており、2016年6月13日に当該取決めの効力が発効した旨が公益財団法人交流協会に掲載されていました。
1.6月13日、平成27年11月26日に当協会と亜東関係協会との間で署名した標記民間取決めが効力を生じましたので、お知らせします。
2.当協会としては、本取決めにより日台間の健全な投資・経済交流が更に促進されることを期待しております。
(公益財団法人交流協会のHPより抜粋)
したがって、前回の日台租税条約について取り上げた時点で、すでに当該取決めは発効している状態にありました。ただし、当該取決めの適用開始は2017年1月1日からであるという点に変わりはありません。
したがって、2017年1月1日以降は配当、利子、使用料の限界税率を10%とする租税条約の適用を受けることが可能となります。
一方で、台湾に子会社が存在し、現地子会社の未分配利益について従来の源泉税率を加味して繰延税金負債を計上しているような場合には、上記の租税条約が発効したことにより、繰延税負債の計上金額を見直す必要が生じる可能性がありますので、2016年6月期(四半期含む)以降の決算にあたっては注意が必要です。