「学資金」の非課税範囲の拡大とは?-平成28年税制改正
税務通信3434号の税務の動向に”非課税となる「学資金」は人材確保目的で支給した場合が基本”非課税という記事が掲載されていました。
平成28年度税制改正により、所得税が非課税となる「学資金」について見直しが行われており、2016年4月1日以後に会社から従業員に支給される一定の学資金が新たに非課税とされています。
所得税法上は、奨学金などの「学資金」は非課税とされていますが、原則として「給与その他対価の性質を有するもの」は給与課税の対象とされており非課税とは取り扱われないこととされています(所得税法第9条1項15号)。
平成28年度税制改正では、「給与その他対価の性質を有するもの」のうち、給与所得者(法人の役員や従業員の配偶者に対するものなどを除く)がその使用者から受け取るもので、通常の給与に加算して支給されるものが、新たに非課税とされることとなりました。
そもそもこの改正が行われたのは、地方公共団体が医師確保対策として、医学生等に対して修学等資金を貸与し、卒業後、地方公共団体が指定する医療機関に一定期間勤務した場合には、その資金の返還を免除する仕組みにおいて、指定された勤務医療機関が地方公共団体が設置主体である医療機関である場合には給与課税と取り扱われていたことに対して、これを非課税とする措置を厚生労働省が要望したことによります。
したがって、これを一般企業に置きかえて「人材確保を目的に、後に自社に入学する大学生等に貸与した学資金の債務免除益が基本となるようだ」(税務通信3434号)とされています。
それでは、一般企業が専門学校等に通う従業員に対して学資金名目で授業料を支給した場合も学資金として非課税となるのかが気になりますが、これについては従来通り「業務遂行上直接必要な費用」に該当するかどうかによって給与課税対象として取り扱われるか否かが判断されることとなり、上記の記事では「単に学資金名目で支給しただけでは、給与課税の潜脱を目的としているものとして否認される可能性があるだろう」とされています。
新卒の確保を目的として利用する余地はありますが、約束通りに入社しなかった場合の回収の手間や、返済不要とするための勤続期間の設定が会社として納得できる期間に設定できるかという点を考えると、現実問題としてはやはり一般企業に与える影響が大きくはないといえそうです。