クレジットカードのショッピング枠利用した取引と消費税
実務上関係することはまずなさそうですが、ちょっと面白かったので、今回はクレジットカードのショッピング枠を利用した取引と消費税についてです。
クレジットカードを使うと普通にキャッシングできたりするわけですが、クレジットカードのキャッシング機能は、クレジットカード会社が設定している正規の機能で、銀行からお金を借りるのと同じようなものと位置づけられます。ただし、通常、利用枠はショッピング枠に比べて低く設定されています。
一方で、ショッピング枠を利用したキャッシングについては、通常クレジットカード会社が定めている規約に違反するもので、怪しげな広告で見かけたことがある方も多いのではないかと思います。
仕組みを要約すると以下のようになっているようです。
- クレジットカードの保有者が現金化業者にキャッシングを申込む
- 現金化業者は、ほとんど価値がないもの(たとえば100円ショップで売っているような商品)を申込者がキャッシング希望額に応じた価格(例えば10万円)で販売するものとしてクレジットカード会社の承認をとる(単なる石ということもあるらしい)
- 取引がクレジットカード会社に承認されれば、現金化業者は間違いなく代金が回収できるので、価値のない商品を申込者に送付するとともに、キャッシュバックと称して手数料を差し引いた金額を申込者に振り込む
- 現金化業者は、後日クレジットカード会社から販売代金を回収する。
クレジットカード会社が本来想定している使用方法ではないので、通常規約に違反するわけですが、業者を利用しなくとも、キャッシング目的でクレジットカードを使用してブランド品などを購入し、中古ショップに売却するというようなことを行うのと同じではあります。むしろ利用者からすると、そのような方法よりも現金化業者を利用した場合の方が手取りが増える可能性も否定できません。
さて、前置きが長くなりましたが、このクレジットカードのショッピング枠を利用してキャッシングを行っていた現金化業者が、現金化する際に消費税が課せられるかについて税務当局と争いになったそうです(T&A master No.665)。
この事業者は、商品の売買価格は申込者の融資希望額によって決定されており、取引の実態は商品売買を仮装した金融取引で、商品の販売価額とキャッシュバック額の差額は利子に他ならないと主張したとされています。
上記のような事業者の主張に対し、審判所は消費税法上「金銭の貸付け」については、別段の定義がないため、特段の事情がない限り通常の用語例に従って解釈されるべきと判断しました。そして、一般的に「金銭の貸付け」とは、消費貸借契約および準消費貸借契約を基本とし、①金銭の授受および②返還の合意を要件とするものと解されるとしました。
そして、クレジットカードのショッピング枠の現金化については、キャッシュバックと称して金銭の授受は認められるが、利用者はクレジットカード会社に対して債務を負い、事業者はクレジットカード会社に対して債権を取得することに合意したものと認められることから、返還の合意があったとはみとめられず、よって「利子を対価とする金銭の貸付け」には該当しないとされました。
その上で、この一連の取引は顧客への役務提供にあたり、商品販売額とキャッシュバック額との差額は、顧客に対する役務提供の対価として消費税の課税対象となるとされたとのことです。
ショッピング枠のキャッシングを行っている事業者の一般的な消費税処理がどうなっているのかはわかりませんが、仮に上記のような取扱いが一般的であったとすると、元々高利と想定される利子相当額がさらに高くなるかもしれません。