扶養控除等申告書におけるマイナンバーの取扱い(その5)-新たに認められた帳簿方式とは?
扶養控除等申告への個人番号に記載方法に関連して、原則法、余白に一定の文言を記載する方法を確認しましたが、最後に帳簿作成方法について確認することとします。
4.2016年3月改正で新たに認められることとなった帳簿記載方式
今年の改正によって平成29年分の以下の申告書について、支払者が、申告書に記載すべきマイナンバー等の事項を記載した帳簿を備えているときは、申告書を提出する者は、その申告者にマイナンバーの記載を要しないものとされました。
この帳簿方式を採用することでマイナンバーの記載を省略できるのは以下の申告書となっています。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
- 退職所得の受給に関する申告書
- 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
この方式が適用できるのは平成29年分からとされていますので、年末に向けて回収するであろう平成29年分の扶養控除等(異動)申告書から適用することが可能です。
4-1 備えるべき「帳簿」の要件は?
帳簿方式を採用しようとする場合の、「帳簿」には以下の事項を記載することが必要とされています(国税庁 源泉所得税FAQ Q1-3-3)
- 扶養控除等申告書に記載されるべき提出者本人、控除対象配偶者、控除対象扶養親族等の氏名、住所及びマイナンバー(個人番号)
- 帳簿の作成に当たり提出を受けた申告書の名称
- 2の申告書の提出年月
上記の記載事項の2および3についてですが、この「帳簿」は、上記の申告書の提出の前に、これらの申告書の提出を受けて作成されたものに限られるとされています(国税庁 源泉所得税FAQ Q1-3-2)。
また、帳簿については電磁的記録によることも認められていますので、Excelで作成したものであっても記載すべき事項が記載されていれば、要件は満たすことととなります。
4-2 文言方式で収集した申告書から帳簿を作成することはできる?
帳簿方式を採用する場合、素直な方法としては、1回はマイナンバーを記載した申告書を提出してもらい、それに基づいて帳簿を作成し、翌年以降はマイナンバーを記載しないで済ませるという方法になると考えられます。
では、申告書の余白に文言を記載することでマイナンバーの記載を省略した扶養控除等申告書に基づいて帳簿を作成し、翌年からマイナンバーの記載を省略するということが可能なのかが問題となりますが、これは以下の通り、可能であるという見解が示されています。
国税庁 源泉所得税FAQ Q1-3-5(一部抜粋)
なお、一定の場合には、扶養控除等申告書に直接マイナンバー(個人番号)を記載せずに、「記載すべきマイナンバー(個人番号)は給与支払者に提供済のマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載して提出することができることを明らかにしている(Q1-5-1)ところであり、この方法により提出を受けた扶養控除等申告書及びその申告書と紐付けられるよう管理されたマイナンバー(個人番号)に基づき帳簿を作成することは可能です。
というわけで、平成28年分について文言方式を採用した会社の場合、帳簿を作成しておけば、平成29年分はマイナンバーの記載をしなくても問題ないということになります。
取扱注意の余計な帳簿が一つできあがるという点と、初回は原則方式か文言方式で一度申告書を回収しなければならないいう点はありますが、実務上とりうる選択肢の一つであることは間違いないと思います。
5.まとめ
最後に平成28年分および平成29年分の扶養控除等(異動)申告書でとりうる選択肢をまとめると以下のようになると考えれます。
5-1 平成28年分にマイナンバーを記載させたものを回収済の場合
①平成29年分も同様にマイナンバーの記載を求め回収する(原則法)
②平成28年分の申告書で収集した情報に基づき帳簿を作成し、平成29年分のマイナンバーの記載は省略する。(帳簿方式)
5-2 平成28年分にマイナンバーを記載していない状態で回収した場合
①平成28年分にマイナンバーを補完記入してもらい帳簿を作成し、平成29年分はマイナンバーの記載を不要とする。
(マイナンバーを補完記入してもらうことは必須ではない点にご留意ください)
②平成28年分の余白に文言を記載してもらい、回収した申告書に基づいて帳簿を作成し平成29年分のマイナンバーの記載を不要とする。
③平成28年分には手を付けず、平成29年分を原則法あるいは文言方式で回収し、帳簿を作成し平成30年分からマイナンバーの記載を不要とする。
④文言方式を継続する。
⑤平成29年分から原則法を継続する。
帳簿方式によれば、単純にマイナンバーの記載を省略することができるので便利ではありますが、帳簿の管理には気をつけなければなりませんので、そういった意味では文言方式を継続するという選択も十分考えられます。
総合的に考えて、どの方法がよいのかを各社選択する必要があるのではないかと思います。