株主総会議事録に最低限必要な記載事項はなんですか
株主総会の議事録については、会社法318条1項ににおいて「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。」とされています。
では、この規定に違反した場合はどうなるのかですが、株主総会議事録に記載しまたは記録すべき事項を記載もしくは記録せず、または虚偽の記載もしくは記録をしたときは、100万円以下の過料に処せられます(会社法976条1項7号)。
ただし上記のように、株主総会議事録を作成しなかった場合(あるいは虚偽の記載をした場合)の罰則はあるものの、基本的に株主総会議事録の有無や記載事項によって、株主総会の決議の効力に影響はありません。すなわち、適法に開催された株主総会で決議された事項については、何をもってそれを証明するかという問題を別とすれば、議事録があろうがなかろうが有効な決議は有効です。
法務省令で定める記載事項とは
株主総会の議事録の記載事項は会社法施行規則72条3項で以下の項目が定められています。
- 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。第四号において同じ。)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
- 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
- 会社法の規定により株主総会で認められている各種意見陳述権に基づく意見や求められている報告事項の概要
- 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称
- 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
株主総会議事録は誰が作成しなければならないか
株主総会の議事録は誰が作成しなければならないかについては、会社法上明文の規定はありません。作成義務者で思い浮かぶのは議長や代表取締役ではないかと思いますが、会社法上施行規則で議事録に記載が要請されている事項で「議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名」とされていますので、議長や代表取締役でなくとも取締役であればよいということになっています。
逆にいえば、最低限取締役でなければならないということになります。
出席した取締役等の押印は必要か
取締役会議事録や監査役会議事録では、出席者の署名(もしくは記名押印)が求められていますが(3691条3項、393条2項)、会社法上、株主総会の議事録ではこのような定めはなされていません。
取締役会議事録等と取扱いが異なる取扱いとなっているのは、「株主総会議事録には、取締役会議事録のように369条5項のような推定効もないので、作成者の署名または記名押印を要しないものとされている」ためです(論点解説 新・会社法 千問の道標 商事法務)。
なお、株主総会議事録にも署名もしくは記名押印がなされているイメージをもっている方もいるかもしれませんが、旧商法時代には株主総会議事録に議長及び出席取締役が署名もしくは記名押印することが求められていましたということがあります。
また、代表取締役の選任登記に株主総会議事録を使用するときは、商業登記規則によって議長及び出席取締役の押印が必要とされています(商業登記規則61条4項)。ただし、「変更前の代表取締役が登記所に提出した印鑑が押印されているときは、会社法の原則どおりの記名押印があれば足り、全ての者について印鑑証明書は不要」とされています(商業登記ハンドブック 第3版 商事法務)。
議事録はいつまでに作成しなければならないか
会社法上、議事録をいつまでに作成しなければならないというような定めはありません。一方で、議事録の備置について、会社法318条2項において「株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。」とされており、「株主総会の日から」という点を重視すれば総会日に議事録を作成しなければならないということになりますが、実務上は総会日後数日内に作成されていることが多いと思われます。