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「居住者」「非居住者」の判断を滞在日数のみで行うのは要注意

T&A master No.691に「滞在日数だけでは住所判断の決め手にならず」という記事が掲載されていました。

この事案は、不動産投資及び管理業が営む請求人と取引をした譲渡人が所得税法2条1項5号に規定する「非居住者」に該当するかが争われたものです。納税者は譲渡人が居住者であるとして源泉徴収していなかった一方で、税務当局は譲渡人が非居住者であり請求人に源泉徴収義務があると主張しました。

上記に対し審判所は、各人の住所の認定は、以下の6つを総合的に勘案して行うのが適当としました。
①滞在日数
②生活場所及び同所での生活状況
③職業及び業務の内容・従事状況
④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地
⑤資産の所在
⑥生活に関わる各種届出状況等

上記の記事において、滞在日数についての認定事実としては「譲渡人の日本における滞在日数は、土地等の譲渡対価の支払日である平成26年4月30日前1年間に174日であり、他方、当該期間における譲渡人の中国における滞在日数は191日である」とされていますが、一方で「請求人は譲渡人の土地等の譲渡対価の支払日前1年間における滞在日数は中国よりも日本の方が多いなどと主張した」とされていますし、滞在日数だけでは決め手にならないという点からすると、おそらく滞在日数は日本191日、中国174日が正ではないかと思われます。

いずれにしても、ここでのポイントは17日位の差が「その差はわずか」と判断されており、滞在日数は生活の本拠を判断する上で重要な事情と評価することはできないとされている点です。租税条約において183日ルールとか180日ルールがでてくることが多いので、17日も多ければそちらで判断してしまいそうな気がしますが、この程度であれば他の要素で判断が異なることがあるという点には注意が必要です。

また、この事案では③について、譲渡人は日本の株式会社の代表取締役と中国親会社の監事を兼任していたとのことですが、この点については、いずれも常駐が必要とされるものではないので、生活の拠点を判断する上で重要な事情と評価することはできないとされています。

反対に、生活の拠点を判断する上で重視されたのは、この事案では②生活場所及び同所での生活状況、④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、⑥生活に関わる各種届出状況等でした。

②生活場所及び同所での生活状況については、譲渡人が日本滞在時に、住民登録地の住所に起居していた事実は認められない一方で、中国滞在時においては、身分証記載地(中国)の住宅で家族と共に起居していたと認められる点が、本拠地をうかがわせる事情と評価されています。

④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地については、譲渡人と生計を一にする配偶者その他の親族が中国にいる一方で、日本にはいないという点が、中国が生活の本拠であることをうかがわせると評価されています。

最後に⑥生活に関わる各種届出状況等については、問題となった土地の所有権移転登記の際、身分証記載地(中国)を所有者の住所として登記するなど、譲渡対価の支払日時点で、生活の本拠が身分証記載地であることを前提としていることなどが、生活の本拠地であったことを示唆する事情であると評価できるとされています。

滞在日数が最も簡単に判断できる材料であるため、優先的に判断してしまいそうですが、上記の通り、他の考慮要素によって結論は変わりうるという点には改めて注意が必要です。

なお、居住地の判断に関連する最高裁判例には以下のようなものがあります。

・所得税法上住所の定義規定はないため、住所とは民法22条に定める住所の意義のとおり、各人の生活の本拠をいうものと解される(昭和29年10月20日大法廷判決)
・各人の生活の本拠とは、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すもの(昭和35年3月22日第三小法廷判決)
・一定の場所がその者の住所であると認定するについては、その者の住所とするだけでは足りず、客観的に性格の本拠たる実態を具備していることを必要とするものと解すべき(昭和32年9月13日第二小法廷判決)

いずれも50年以上の前の判決であり当時とは様々な状況が変わってきているとは思いますが、とはいえ最高裁の判決ですので、新たな判断が下されるまでは上記を意識しておく必要性は高いといえます。

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