平成29年度税制改正(その2)-法人税関連
前回に引き続き税制改正マップ 平成29年度(あいわ税理士法人 編)を参考に平成29年度税制改正の内容を確認していきます。
4.譲渡制限付株式又は新株予約権を対価とする費用の帰属年度の特例の見直し
今回の改正により、譲渡制限付株式又は新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例について以下の見直しが行われています。
- 役務の提供を受けた法人以外の法人が交付する者が対象に加えられています(発行法人の拡大)
- 譲渡制限付株式を対価とする費用について、原則として、譲渡制限が解除されることが確定した日の属する事業年度の損金に算入されることとなります(損金算入時期の見直し)
- 非居住者に対して交付された場合は、その者が居住者であったとした場合に給与所得等が生じることが確定した日において役務の提供を受けたこととされます。
上記1について、改正前においては役務の提供を受けた法人又はその法人の株式を直接100%保有する親法人が交付するものに限られていたのが、完全親法人でない法人が交付するものにも対象範囲が拡大しています。したがって、「例えば、ある法人が、従業員から役務の提供を受けた場合において、上場会社である資本関係のない取引先が交付した譲渡制限株式をその役務提供の対価として利用した場合も、その譲渡制限付株式がその法人において費用の帰属年度の判定対象となる見込み」とのことです(平成29年度税制改正の要点解説 清文社)。
上記のようなことが可能となるとのことですが、100%子会社でない子会社の従業員に対して、上場会社である親会社の株式を対価として使用するというのが現実的な使い方になるのかなという気がします。
なお、法人が役員から役務の提供を受けた場合に、上場会社である資本関係のない取引先が交付した譲渡制限付株式をその役務提供の対価として利用する場合、事前届出給与の要件を満たすことができないため、損金算入することはできません。
また、上記2については、従来は、譲渡制限付株式を対価とする費用は、給与等課税事由が生じた日、すなわち、譲渡制限が解除された日の属する事業年度に損金算入されることとなっていましたが、これが譲渡制限が解除されることが確定した日の属する事業年度に改正されています。
譲渡制限が解除される日と譲渡制限が解除されることが確定する日がずれることが一般的な設計なのかは今後の事例をみて確認したいと思いますが、仮に両者にズレがあるのであれば、譲渡制限が解除されることが確定した日に損金算入が認められることとなります。譲渡制限が解除されることが確定する日の方が、譲渡制限が解除される日よりも早いはずなので、損金算入の時期を早めることで、税務上の観点からは使い勝手がよくなるという配慮なのではないかと思います。
なお、上記の改正は平成29年10月1日以後に交付する決議をする給与から適用されるとされています。
5.営業権の償却、資産調整勘定等の減額法法の見直し
従来、営業権および資産調整勘定(いわゆる税務上ののれん)、差額負債調整勘定については、期中に取得したとしても月割償却は行われず5年間の均等償却が行われていました。これは、旧商法が営業権の償却方法を5年金等償却と定めていたことに由来しているとされています。
平成29年度税制改正により、営業権、資産調整勘定、差額負債調整勘定、いずれについても月割で償却額を計算することとされています。これは、平成29年4月1日以後に取得等するものについて適用されるとされています。
税効果にも影響すると思いますので、注意が必要です。