キャンセル料が消費税込の100%ならキャンセルするとやはり損するらしい
すこし前に”キャンセル料100%ならキャンセルすると損なのか?”で書いた内容に関連する記事が税務通信3524号の税務相談に掲「損害賠償金の請求額に消費税相当額が含まれている場合の仕入税額控除の可否(和氣 光 税理士)」載されていました。
この記事での質問内容は以下のとおりです。
当社は社員旅行を実施することとし温泉旅館を予約していましたが、旅行の直前に重大事件が発生し、やむを得ず旅行を中止しました。
旅行の中止に伴い温泉旅館の予約もキャンセルしたのですが、直前のキャンセルであり、約款に基づき宿泊料の全額をキャンセル料として徴収されました。
キャンセル料の明細を確認したところ,宿泊料に加えて消費税相当額も加算されていたのですが、この場合において当社が負担した消費税相当額は仕入税額控除の対象になるのでしょうか。
直前のキャンセルのためキャンセル料が100%となっている場合であっても、税抜価格の100%となっていることが多いものの、上記のように消費税相当額が加算されていることもあります。
キャンセル料は損害賠償金として消費税の課税対象とならないというのは前回記載したとおりなので割愛し、「キャンセル料に消費税相当額が含まれている場合の課税関係」として記載されていた内容を紹介します。
キャンセル料が消費税の課税対象及び課税仕入れに該当しない場合において、その請求額に消費税相当額を加算するかしないかは当事者間の了解事項に属するものであり、消費税相当額が加算されていることによってその消費税相当額を支払った者が仕入税額控除の対象にできるものではなく、消費税を加算した金額の全額が課税仕入れに係る支払対価の額以外の支払金額となり、仕入税額控除の対象にはならないことになります。
不動産売買時に固都税を当事者間で清算しても、それは租税公課ではないというのと同様、消費税見合の金額がキャンセル料に含まれていても、それは消費税ではなく単に当事者が勝手に決めたものに過ぎないということになるということのようです。
したがって、このようなケースの場合は、まず、あらかじめキャンセル料が消費税込の金額であることが明示されていたかを確認し、単に宿泊料金の100%というような記載だけであれば、支払う前に消費税分が加算されるのはおかしいと主張することが必要だと考えられます。
仮に、キャンセル料が消費税込の100%と明示されていた場合には、合意していたので仕方がないという側面はあるものの、そもそも宿泊料金を超える損害があるのかは疑問ですし、宿泊施設側がキャンセル料が消費税の課税対象にはならないということを理解していないだけというケースもあり得るので、この場合も交渉してみる価値はあると考えられます。
そして、キャンセル料は消費税込の100%譲れないということであれば、キャンセルせずに不泊にするということが考えられます。多くの宿泊施設では不泊の場合は宿泊料100%+消費税を請求するとされており、課税取引として取り扱われていることが確認できます。
キャンセル料が100%請求されるようなタイミングでのキャンセルも不泊も似たようなものですが、キャンセルされた場合は、需要があれば他の客の宿泊を受けられるのに対して、不泊は、お客が来るかもしれないため部屋や料理を確保しておかなければならないという点で異なります。
来年10月には消費税が10%に増税されますし、現在であっても社員旅行のように人数が多いと消費税相当分といっても馬鹿にならない金額ですので、キャンセル料100%の場合のキャンセルは慎重に行ったほうがよさそうです。