一体開示で表示方法を変更した場合の記載事例
経営財務3377号のニュースに一体開示関連の施策公表を契機に有形固定資産の科目表示を共通化した事例が掲載されていました。
実務上は開示書類作成システム上で過年度の設定を引き継いでいるので、有報と計算書類で直接控除と間接控除が異なっていても余計に手間がかかるという感じはしませんが、両者の一致を目検で確認する上では表示方法が統一されていた方が多少確認しやすいという部分はあると思います。
経営財務の記事で紹介されていたのは、2018年3月期の有価証券報告書における古川電池(東証1部:新日本)の事例です。この事例は開示の手間暇を削減する(効率的な開示)というよりもより効果的な開示を目的としているものと考えられます。
同社は2017年3月期において有報(連結)は間接控除、それ以外は直接控除で表示していましたが、2018年3月期は計算書類および有報(単体)の表示を有報(連結)に合わせ、間接控除で表示する方法に揃えたとのことです。
こう書くと少しポイントがわかりづらいですが、連結計算書類は直接控除、有報(連結)は間接控除となっていたものを、間接控除に統一し、合わせて有報(単体)も計算書類も間接控除に変更したということです。
さて、このような変更を行った場合に「表示方法の変更」にどのような記載をするのかですが、同社では以下のように注記されています。
(表示方法の変更)
(貸借対照表)
(中略)
(2)事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組による表示方法の変更
「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」が平成29年12月28日に金融庁・法務省より公表されました。これを契機に財務諸表の表示を見直した結果、より明瞭性を高める観点から当事業年度より以下の勘定科目の表示方法を変更しております。
前事業年度において、「固定資産」の「有形固定資産」に属する資産の減価償却累計額については当該各資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各資産の金額として表示しておりましたが、当事業年度においては当該各資産項目に対する控除科目として独立掲記しております。
また、同社は連結計算書類においても以下のような注記を行っています。
5.表示方法の変更
(連結貸借対照表)
(中略)
(2)事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組による表示方法の変更
「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」が平成29年12月28日に金融庁より公表されました。これに契機に連結計算書類の表示を見直した結果、より明瞭性を高める観点から当連結会計年度より以下の勘定科目の表示方法を変更しております。
(中略)
前連結会計年度において、「固定資産」の「有形固定資産」に属する資産の減価償却累計額については当該各資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各資産の金額として表示しておりましたが、当連結会計年度においては当該各資産項目に対する控除科目として独立掲記しております。
(以下省略)
上記の事例とは反対に間接控除を直接控除に統一するという場合には「より明瞭性を高める」という部分をそのまま用いるのは妥当ではないと考えられますが、同じような変更を行う場合には参考になると考えられます。