税務当局による情報提供要請権限が拡充へ
T&A master No.766に「任意の情報紹介拒否なら強制力&罰則も」という記事が掲載されていました。
この記事によれば、デジタルエコノミーにおけるC to C取引により多額の所得を得ているにもかかわらず所得税を申告してない者を把握するため、平成31年度税制改正により、税務当局による情報提供要請権限が拡充されるとのことです。
多額の所得を得ているのであれば、過去分も含めしっかり徴収してもらいたいところですが、具体的には以下の場合に情報提供を求めると述べられています。
- 多額の所得(年間1,000万円超)を生じうる特定の取引の税務調査の結果、半数以上で当該所得等について申告漏れが認められた場合
- 特定の取引が違法な申告のために用いられるものと認められた場合
- 不合理な取引形態により違法行為を推認させる場合
上記に該当する場合には、氏名のほか、(保有している場合は)住所、個人/法人番号の提供を求めるとのことです。
記事によれば、1.は「メルカリや仮想通貨業者」、2.は「脱税商品の販売業者」、3.は「金地金業者」が念頭に置かれている模様とのことです。1.は年間1,000万円超となっているので、現実的には「仮想通貨業者」が対象になるものと思われます。
2.の「脱税商品の販売業者」については、具体的にどのような商品かはわかりませんが、販売業者は脱税商品を売っているとは認めないはずなので、情報提供させて脱税している者から税金を徴収するということになるのだと思われます。
3.については、現行法では100万円未満の金取引については支払調書の提出が不要とされているため、100万円未満の取引を繰り返すことで納税を逃れている者がいることを想定しているとのことです。金地金については、密輸によって消費税分の還付を受けるという手口が度々取り上げられていますが、仕入税額控除を認める要件の厳格化も図られるようです。
「現在の執行においても、例えば金融機関やクレジット会社に対する任意の情報提供要請は行われているが、税法上、その根拠となる明文規定があるわけではない」とされています。実際問題として、このような情報提供要請に対して、金融機関やクレジット会社がどの程度情報提供に応じているものなのかは気になるところですが、平成31年度税制改正によって、「任意の情報提供要請に応じない場合には、強制力をもって情報提供を求められるようにする」とのことです。
なお、正当な理由なく情報提供を拒否した場合には、検査忌避の罰則を受けることになるものとみられるとされています。