仕入先が価格増拒否しても「買い叩き」?
T&A master No.779に「仕入先が価格増拒否でも”買い叩き”か」という記事が掲載されていました。
2019年2月にはイトーヨーカ堂、3月にはジャパンビバレッジホールディングスに買い叩きの規定に違反する行為を行ったとして公正取引委員会より勧告がなされており、今後も「買い叩き」については厳しく見られていくことが予想されるため、「買い叩き」に該当するのかどうかについては、特に関心が高いものと思われます。
そもそも、仕入先が価格増を拒否するというの直ぐにイメージできませんでしたが、この記事で例として紹介されていたのは以下の様なケースです。
企業が個人の地主から現在5万円(税込)で駐車場を借りているとする。消費税率の引き上げを控え、企業は転化対策特措法に抵触しないように税込価格を「5万円×110/108≑50,926円」に引き上げるべく契約条件の変更を個人地主に申し入れることになるが、特に個人は「端数が出るのは面倒」といった単純な理由でこれに応じないことがある。
振込なら端数がでてもどうということはない気はしますが、現金で支払っているようなケースだとそのようなことはあるかも知れません。
何故これが買い叩きになる可能性があるのかですが、3月4日までパブリックコメントに付されていた改正転嫁対策ガイドラインの第1部第1 3(4)クで以下が新設されており、これによると、上記のようなケースも「買い叩き」に該当するように読めるためとされています。
標準税率が適用される商品について,消費税率引上げ前に税込価格で対価を定めているところ,取引先からの対価引上げの要請や価格交渉の申出がないことを理由として,消費税率引上げ後も消費税率引上げ前に定めた対価を据え置く場合
普通に考えれば、上記のようなケースまで買い叩きとされてしまうことはないだろうという気はするものの、仕入先が税率差分の価格改定を拒否したということを明確にしておかないと、結果的に価格が改定されていないことにより「取引先からの対価引上げの要請や価格交渉の申出がないこと」と区別が付かなくなってしまうため、書面等で確認をとっておく必要はあると考えられます。
また、上記記事では、「そもそも当事者が任意に設定した価格が消費税率のアップに伴って『例外なく』『自動的に』変更されるべきなのか、上記クでいう『対価を据え置く』とはその旨の通知で判断すべきべきなのか等、実務的な疑問も多い」とされています。
確かに当事者で決めた価格が「例外なく」「自動的に」変更されるのはおかしいですが、それを放置すると買い叩きが生じるというのもまた事実なので、今後どのような運用がなされていくのかには注意したいと思います。