最近の会計監査人の異動の状況を確認
例年のことではありますが、この時期になると会計監査人の異動に関する適時開示が複数行われます。
最近開示された会計監査人の異動で目立ったところでは、2019年5月9日に株式会社リコーがあずさ監査法人から監査法人トーマツに異動する旨を公表しています。リコーなどの大企業が会計監査人を変更するとなると、何か問題があったのかなと勘ぐってしまいますが、変更の理由は、監査役会が現会計監査人の監査継続年数が長期にわたっていることから比較検討を実施した結果とされています。
また、2月決算会社のサマンサタバサジャパンリミテッドは、2019年4月26日に会計監査人がEY新日本から東邦監査法人に異動する旨を開示しています。変更の経緯としては、「現会計監査人の監査関与年数が長期にわたること、また近年は監査報酬が増加傾向にあることを踏まえ、当社の事業規模に適した監査対応や監査報酬を基準とした会計監査人の選定について、検討を行っておりました。また現会計監査人より、当社の経営環境の変化に伴い監査工数が増大する旨の説明を受けたことから、当社として会計監査人を見直すこととし、複数の監査法人について比較検討いたしました。」と記載されています。同社のケースは、退任する公認会計士等の意見が記載されており、”現会計監査人からは、「会社の経営環境の変化に伴い監査工数が増大することを理由に、任期満了により契約更新を差し控えたい旨を申し出たものであります。」との意見を得ました。”と記載されています。
ベイカレント・コンサルティングは2019年4月19日に会計監査人が監査法人トーマツから太陽監査法人に異動する旨を開示しています。同社のケースでも「監査役会は、有限責任監査法人トーマツによる監査継続年数等に鑑み、改めて会計監査人を検討することにいたしました」とされています。監査継続年数「等」に鑑みてということなので、継続年数のみではないという前提ではあるものの、2014年設立後わずか5年での交代を検討するというのは、年数を問題とする捉え方の中では相当短期の部類に入ると思われます。
最後に変更理由が多少面白いところでは、セキ株式会社の事例がありました。同社は、2019年5月19日にEY新日本からえひめ有限責任監査法人に異動する旨を開示していますが、異動の経緯には、「現会計監査人の当年度における事務所移転を契機に、新たな会計監査人を当社の企業規模に適した監査対応、監査費用等の観点から総合的に検討し、・・・」と記載されています。そういえば、最近EY新日本のオフィスが東京ミッドタウン日比谷に移転したんだっけと思いつつ、そもそも愛媛の会社なのでどのような関係があるのだろうと思いましたが、「地区拠点の統合について」という新日本のリリースに因れば、どうやら2018年7月1日に松山事務所が閉鎖されたためということのようです。出張ベースになれば、余計なコストもかかるし、何かと不便であることは間違いないので、それなら納得です。