清流監査法人に対し行政処分を勧告
公認会計士・監査審査会は、2019年7月5日に「清流監査法人に対する検査結果に基づく勧告について」を公表し、金融庁長官に対し、行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました。
はじめて見た気がする名前の監査法人でしたが、確認してみると現在4社の上場会社(フリージア・マクロス、技研ホールディングス、夢みつけ隊、フーバーブレイン)の監査を行っていました。
この勧告では、「当監査法人を検査した結果、以下のとおり、当監査法人の運営は、著しく不当なものと認められる。」として結構辛辣なことが記載されています(行政処分を勧告するくらいなので、それなりのことが書かれているのは当然ではありますが・・・)。
小規模な監査法人では、ありがちな気はしますが、当該監査法人は、社員が5名で非常勤職員を中心とした監査補助者等により構成されており、設立以来、特定の個人により実質的に支配されている企業グループの監査報酬が業務収入の大部分を占めているとされています。
そして、監査業務は、総括代表社員を含む3名の社員を中心に実施されており、監査補助者は主に非常勤職員で構成され、業務執行社員が主査を担当する監査業務もあるなど監査実施態勢は十分ではないとされています。
これに対して、「総括代表社員は、当監査法人の強みを、経験を積んだ公認会計士を基本に監査チームを編成していることであるとし、社員及び職員のこれまでの経験に依存した運営を継続しており、品質管理態勢を十分に整備する必要性を認識していない。」とされています。
「品質管理態勢を十分に整備する必要性を認識していない。」とまで書かれるのは、なかなか厳しいですが、当監査法人に対しては平成 29 年度品質管理レビューにおいて限定事項が付されていたとのことで、その際、「総括代表社員は、限定事項とされた関連当事者取引の不備の根本原因を会計基準や監査の基準の理解不足にあると認識している。」とされています。にもかかわらず、根本的な改善が見られないので、今回このような厳しい表現で勧告が行われたということのようです。
また、品質管理態勢に関しては、「限定事項付き結論となった平成 29 年度品質管理レビューの結果を会計監査人の選任議案の決定権限を有する監査役等に書面で伝達していない。」などと記載されています。
さらに、個別監査業務については、「総括代表社員を含む業務執行社員及び監査補助者は、会計基準及び現行の監査の基準が求める水準の理解が不足している。そのため、固定資産の減損会計における兆候判定の誤りや株式移転の会計処理の誤りを見落としている事例、関連当事者取引の開示や連結財務諸表に関する会計基準に従った連結範囲の検討が不足している事例などの重要な不備が認められる。」とされています。
業務補助者のみならず、「総括代表社員を含む業務執行社員」も「会計基準及び現行の監査の基準が求める水準の理解が不足している」というのは、全員、会計も監査もどちらも合格点に達していないといわれているに等しく、会計士資格ってなんだろう・・・という気になります(ちなみに当然ですがCPEはクリアしていたようです)。
その他、色々書かれていますが、極めつけは「監査報告書日後に実施した手続を監査報告書日前に実施したように監査調書に記載している事例など、不備が広範かつ多数認められる。」と、調書の日付を偽装しているということまであったとされています。
こんなことまであれば行政処分の勧告も当然といったところでしょうか。ただ、中堅監査法人でも監査受託を敬遠する上場会社があるのも事実で、そのような会社を監査してくれる出来のよい小規模監査法人なんて、なかなか無いというのも事実だと思います。