通達に従った税務処理を否認する課税処分が司法でも相次いで容認されているらしい
T&A master No.809のニュース特集に「通達と異なる課税処分を司法も容認」という記事掲載されていました。この記事によると、”通達に沿った税務処理を否認する課税処分を不服として提起した訴訟で、納税者の主張が相次いで斥けられている”とのことです。
この記事で取り上げられていたのは、財産評価基本通達総則6項適用事案と消費税法基本通達9-1-13ただし書き(契約基準)の適用が否認された事案の二つです。
ここでは消費税法基本通達9-1-13ただし書き(契約基準)の適用が否認された事案について確認するものとします。
所得税基本通達、法人税基本通達、消費税法基本通達はそれぞれ、固定資産の譲渡の収入すべき時期を「その引渡しがあった日」としつつ、「ただし書」として、納税者の選択により、その固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときはこれを認める旨が定められています。
この事案は、「金売買を利用した消費税還付スキーム」と称されるものの一類型で、課税当局は納税者が消費税法基本通達9-1-13ただし書で認めることとしている「契約基準」に基づき「課税仕入れを行った日」を不動産売買契約の締結日とすることを否認したうえで、本事案における「課税仕入れを行った日」とは、不動産の売買代金の支払いが行われた日である旨を主張し、これが裁判所に認められたとのことです。
この記事では、「裁判における国の主張の根底には、消費税還付スキームという”特段の事情”がある事案では、通達の適用を否認することのリスク(画一的な取扱いにより課税の公平を求める立場からの批判)よりも、仕入税額控除の趣旨及び社会通念から裁判所の理解は得られるとの判断があったものと思われる」と分析されています。
そして、「通達の形式・文言に盲従し、自己に有利な解釈に基づきタックスプランニングを組成したとしても、課税当局は、”特段の事情”が認められる場合には、通達とは異なる課税処分を行ったうえで、通達の明文の取扱い自体も司法の判断に委ねるという手段に打って出る可能性があることを理解しておくべきだろう」と述べられています。
上記の事案のように、自己に有利な解釈に基づきタックスプランニングを組成するという大袈裟なものでなくとも、表面的に通達に従った処理を選択するというのは必ずしも安全なものではないという認識はもっておく必要がありそうです。