富裕層に対する追徴税額が過去最高になったそうです
国税庁が2019年11月28日に公表した「平成30事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」によると、主な取組は以下の4つとされています。
- 富裕層に対する調査状況
- 海外投資等を行っている個人に対する調査状況
- インターネット取引を行っている個人に対する調査状況
- 無申告者に対する調査状況
と、主な取組の一番最初に「富裕層に対する調査状況」が掲げられています。平成30事務年度では富裕層に対して5,313件の実施調査を実施したとされています。平成29事務年度の調査件数は5,219件で、調査件数の前年比は101.8%となっています。
このうち申告漏れ等の非違が認められたのは、平成29事務年度が4,269件(調査件数に対して81.8%)、平成30事務年度が4,517(同85.0%)とのことです。
一方、追徴税額は平成29事務年度の177億円から14.7%増加し、203億円と件数の増加よりもかなり大きな増額となっています。ちなみに申告漏れの所得金額でみると、平成29事務年度が670億円に対し、平成30事務年度は763億円と13.9%の増加となっています。
規模の小さな上場会社20社~30社の売上合計位の金額が申告漏れになるとは、日本の富裕層もなかなかのものです。そもそも国税庁の資料でいうところの「富裕層」とはどのレベルの所得の方々なのかが気になりますが、この点については「有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人など」を「富裕層」としており、具体的にどの程度の資産規模の方々が対象となっているのかは定かではありません。
なお、1件あたりの金額でみると申告漏れ所得金額は1,436万円、追徴税額は383万円となりますので、平均値でみると、超富裕層という感じでもない気がします。これは超富裕層ほど専門家等の費用をかけてしっかり対策をとっているということなのかもしれません。
「平成30事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」の最後に「Ⅲ 参考計表」として「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」というものが掲載されています。
第1位は風俗業、第2位はキャバクラで、昨年は1位と2位が逆でしたが、ここは2強という感じです。今回興味深かったのは第3位です。今年度の第3位は「経営コンサルタント」で1件当たりの申告所得漏れ金額は2,045万円、1件当たりの追徴瀬税額(加算税含む)は483万円とのことです。昨年ランク外からの第3位浮上ですが、「直近年分に関する申告漏れの割合」は28.4%で上位10業種の中では唯一30%を下回る結果となっています。
ちなみに1位風俗業は91.5%、2位キャバクラは92.9%、4位のシステムエンジニアは60.6%ですので、これら上位の業種と比較すると著しく低い率となっています(次に率が低いのは6位不動産仲介、9位畜産農業(肉用牛)で31.3%)。
ということは、経営コンサルタンと全体としてはきちんと申告しているものの、大きい事案が結構あるということだと推測されます。