懲戒請求に被超会社の意思確認は必要なし
T&A master No.814のスコープで「税理士法人に対する懲戒請求、信用毀損に該当するか」という記事が掲載されていました。
この記事では、税理士法人に対する懲戒請求が信用請求に該当するかが争われた裁判(2019年7月18日東京地裁)の事案が取り上げられていました。
この事案は、税理士法人である原告が、弁護士法人である被告に対して、弁護士法人が顧問契約をしていた会社を代理して税理士法人に対する懲戒請求を国税庁に行ったことが不幸行為にあたるとして損害賠償200万円を求めたものとされています。
弁護士法人は、税理士法人が税理士でない職員を雇用した上、会社の担当税理士として税理士業務に当たらせ、これにより顧問先の会社から報酬を得ていた行為は非税理士の助長禁止に違反するなどとし懲戒請求を国税庁に対して提出していたとのことです。
税理士でない者を担当税理士とて報酬を得ていたというのであれば、懲戒請求されても文句は言えないという気はしますが、この税理士法人は、「懲戒請求に当たって原告の信用を著しく毀損する結果を招く可能性も含め慎重に検討すべきであったところ、原告代表が本件求釈明を受け取っていない可能性を想定せず、最終的な原告の意思を確認することもないまま本件懲戒請求をしたのであるから、専門家として求められる誠実義務に違反したというべきであり、原告に対する不法行為責任を免れないなどと主張していた」とのことです。
そもそも懲戒請求するのにあれこれ要求されるのであれば、一般人が懲戒請求するのが難しくなってしまいそうですが、この点について東京地裁は「懲戒請求を受けた税理士法人は根拠のない請求により信用等を不当に侵害されるおそれがあるため、懲戒請求をする者は、懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように、対象者に懲戒事由がある子を事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査及び検討をすべき義務を負うべきであるとした」とのことです。
ただし、最高裁判決(平成19年4月24日)を引用し、「懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を書くことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が税理士法の定める懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときは、違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当であるとした」とのことです。
上記からすると、ある程度の根拠があっての懲戒請求であれば、懲戒請求を行ったことによって不法行為にあたるといわれる可能性は低そうです。
そして、弁護士法人が税理士法人の代表の最終的な意思を確認せずに懲戒請求をしたことについては「懲戒請求は被懲戒者に対する確定的な不利益処分を伴う者ではなく、懲戒請求に伴い被懲戒者に生じうる事実場の不利益を踏まえても、懲戒請求者において事前に被懲戒者において事前に被懲戒者の意思を確認する理由はないと指摘」したとのことです。
懲戒請求しなければならないような税理士と関わらないで済むのが何よりですが、一応覚えておくとよいのではないでしょうか。