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収益認識基準ー契約の結合の「ほぼ同時」とは?

3月決算会社の場合、来期首(2021年4月)から収益認識会計基準の強制適用開始となるわけですが、検討をすすめていくと、基準のこの部分はどう解釈して実務に落とし込めばよいのだろうという部分が少なからず出て来るのではないかと思います。

今回は、とりあげるのは契約の結合が求められる場合の要件についてです。収益認識会計基準27項では、以下の様に規定されています。

同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む。)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約について、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合には、当該複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理する。
(1)当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと
(2)1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格又は履行により影響を受けること
(3)当該複数の契約において約束した財又はサービスが、第32項から第34項に従うと単一の履行義務となること

というわけで、契約の結合が求められるのは、
①同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む。)と
②同時又はほぼ同時に締結した複数の契約が、
③上記(1)~(3)のいずれかの要件を満たす
場合ということになります。

このような契約の結合が必要となる理由について、収益認識会計基準の結論の背景121項では、「複数の契約は、区分して処理するか単一の契約として処理するかにより収益認識の時期及び金額が異なる可能性があるため、第27項の要件を満たす場合には、複数の契約を結合して単一の契約として処理する。」と述べられています。

契約の結合が必要となるのは、上記のとおり、その複数の契約が「同時又はほぼ同時に締結」されたものであることが必要となりますが、この「ほぼ同時」はどこまでを「ほぼ同時」というのだろうかというのが問題となります。

結論の背景において、契約の結合について述べられているのは上記121項のみで、「同時」だけでなく「ほぼ同時」が含まれている理由については、特に書かれていませんが、「同時」だけにすると、本来契約を結合して処理すべきものが、1日違いの契約等によって別個に会計処理され、基準が合理的と考える処理とは異なる結果が生じるのを防ぐためであろうことは容易に想像できます。

収益計上額を操作したいという意図はないとしても、契約を結合して処理するのは煩雑なので、契約時期を少しでもずらして契約の結合の要件から外れるのであれば、そのような契約にしようと考えるのは普通にでてくる発想ですので「同時」だけでなく「ほぼ同時」と幅を持たせたというのは理解できますが、一方で、実務担当者としては、どれくらい離れていたら「ほぼ同時」と言わないの?という質問が方々から寄せられることが予想されますので何らかの答えをもっておきたい部分です。

そこで、収益認識基準のベースとなっているIFRS15の取扱いを確認してみたところ、IFRS15のBC75において、「両親議会は、企業は契約を「同時又はほぼ同時に」締結したのかどうかを判定するために判断を適用すべきであると決定した。しかし、両親議会は、当事者による契約の確約の期間が長いほど、交渉に影響を与える経済的状況が変化している可能性が高いことに留意した」と記載されていました。

要はそれぞれ実態を踏まえて考えなさいというIFRSらしい内容ですが、そうはいっても、一般的には、それぞれの契約が離れていればいるほど契約を結合して処理する性質のものでなくなりますよというということだと考えられます。

同BC75では、一方で「複数の契約が単一の商業目的を達成するためにパッケージとして交渉された場合には、当該契約が同一の顧客と同時又はほぼ同時に締結されたかどうかに関係なく、すべての契約を結合すべきであると定めるべきかどうかも検討した。しかし、両審議会はこれを行わないことを決定した。その主な理由は、そのようにすると、企業があまりにも多くの契約を結合することとなって、企業の履行を忠実に描写しないという意図せざる結果が生じるおそれがあるからである」とされています。

得意先との継続的な取引において、以前の取引を踏まえて今回は値引きするというようなことはよくあることだと思いますが、このような取引が「1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格又は履行により影響を受けること」に該当するとすれば、「ほぼ同時」の契約であれば契約を結合して処理をしなければならないということになると考えられます。しかしながら、「ほぼ同時」を幅広にとらえると、上記のBC75で述べられているように「あまりにも多くの契約を結合すること」となる可能性があり、それは基準の求めるところではないと考えられます。実務上も、上記のようなケースにおいて月次で売上の処理が完了している場合に、翌月の同一顧客との取引を結合して処理し直さなければならないとすると事務処理が煩雑になってやってられないというになりかねません。

一方、「当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと」を満たすことにより、契約を結合するというケースであれば、元々まとめて交渉されていたはずのものですので、多少契約の時期がずれたとしても、契約を結合すべきかの検討を比較的行い易いと考えられます。

そうであれば、同一顧客と同時又はほぼ同時に契約した場合に、「当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと」という要件を満たして契約を結合するのか、「1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格又は履行により影響を受けること」で契約を結合するのかによって「ほぼ同時」と判断する期間は異なってもよいのではないかという気はします。

「当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと」には該当せず、「1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格又は履行により影響を受けること」にのみ該当するという場合、重要な影響がありそうな取引が数多く想定されるのでなければ、できるだけ検討が必要な取引を限定できるように期間は極力短めに、同一販売部門など主体を極力限定的にする方向で調整するのがよいのではないかと思います。

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