会社未公表の情報がKAMに記載された早期適用事例は、ほとんどなしー「監査上の主要な検討事項」の早期適用事例分析レポート
2020年10月12日に日本公認会計士協会は、監査基準委員会研究資料第1号「「監査上の主要な検討事項」の早期適用事例分析レポート」を公表しました。
KAMの記載を早期適用した48社を分析したもので、分析対象は2020年3月期までにKAMを早期適用した金商法監査対象会社とし、株主総会の延期等により2020年9月までに提出された有価証券報告書に記載されたKAMを対象としたものとなっています。
全体として早期適用が48社にとどまったほか、特定業種に偏りがある傾向が見られ、全体として早期適用事例の充実によって記載された実務の蓄積は必ずしも十分でなかった可能性があるとされています。
早期適用している会社を業種別でみると、銀行業6社、電気機器5社、不動産業4社、証券・商品先物取引業4社なっています。
KAMの内容
(出典:「監査上の主要な検討事項」の早期適用事例分析レポート P6「監査領域別におけるKAMの個数」日本公認会計士協会)
ITシステムの評価が連結ベースで2社あるという他は、個人的には項目として特に違和感があるものはなく、むしろKAMの項目になりそうだと想像したものがそれなりにあるという感じがします。ただ、「収益認識」については、一般的にどの会社でも重要であると考えられるところ、KAMとして記載されるケースがどれくらいあるのか興味がありましたが、上記からするとどちらかといえばメジャーな項目に位置付けられそうです。
KAMがないとされた事例は、純粋持株会社等の個別財務諸表の監査報告書における事例を除いてなかったとされ、一般事業会社において基本的にKAMを記載しないという選択肢はないといえますが、会社によっては、あきらかにこれというものがないことも想定されます。そのような場合には、結局のところ「収益認識」や「繰延税金資産の評価」などがKAMの項目として選択されやすくなるのではないかと想像されます。
ちなみに、「会社が未公表の情報がKAMに記載された事例は、ほとんどなかった」とのことです。また、会社法の監査報告書にKAMが記載された事例は1社のみであったとされています。
KAMの個数
KAMの個数については、連結ベースで平均2.2個とされています。2個が22社でもっとも多いものの1個が10社、3個が13社となっています。4個以上の会社は早期適用会社48社のうち2社のみとなっており、1個~3個というのが主流といえそうです。
もちろん個数が問題ではないものの、2つ程度重要なものをあげるとすれば何かというのも現実的な考え方なのではないかと思います。