在外子会社の使用権資産のBS表示科目
在外子会社がIFRS16を適用し、使用権資産を計上している場合に日本基準を適用している親会社のBSではどのように表示するのかが気になったので確認してみました。
2020年3月期からすでに存在した論点のはずなので確認してみると、EY新日本有限責任監査法人のサイトで、「使用権資産」の表示については以下の方法が考えられるとされていました。
(1)有形固定資産として表示する場合
①有形固定資産の「使用権資産」として表示
②有形固定資産の「その他」として表示する(別掲するほどの重要性がない場合)
③有形固定資産のそれぞれの科目に含めて表示(従来からそれぞれの科目に含めていた場合)
④有形固定資産の「リース資産」に含めて表示(従来からそれぞれの科目に含めず、「リース資産」として表示していた場合)
(2)無形固定資産として表示する場合
①無形固定資産の「使用権資産」として表示
②無形固定資産の「その他」として表示する(別掲するほどの重要性がない場合)
そして、上記の表示方法が重要な場合には、会計処理が異なることから生じる表示方法に関して、連結財規ガイドライン13-1-4の取扱いに準じて、一定の注記を付すことも考えられますとされています。
さて、2020年3月期の有価証券報告書(連結BS)を検索してみると、BSに「使用権資産」という科目を用いている日本基準適用会社は58社がヒットしました。
一方で、会計方針の注記で「使用権資産」で検索してみると214社がヒットしました。したがって、BS科目の表示としては「その他」あるいは各科目に含めて計上しているというケースの方が多いものと推測されます。
リース取引関係の注記において、使用権資産の表示科目について記載している会社が10社程度存在し、例えば、以下の様な事例が存在しました。
・日本電子航空電子工業
当該使用権資産は、当連結会計年度の連結貸借対照表において、「建物及び構築物(純額)」及び「土地」に含めて表示しております。
・アイカ工業
なお、当該使用権資産は、当連結会計年度の連結貸借対照表において、「リース資産」に含めて表示しております。
・ローム
当連結会計年度よりIFRS16号「リース」を適用しているため、当連結会計年度の連結貸借対照表において「有形固定資産」の「その他」に表示しております。
・相鉄ホールディングス
当連結会計年度よりIFRS16号「リース」を適用しているため、当連結会計年度の連結貸借対照表において「有形固定資産」の「使用権資産」に表示しております。
結局のところ、いずれを選択するのかは会社次第ということになるようですが、「リース資産」については連結財規26条1項4号で「連結会社がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である資産であって・・・」とあるので、この方法を採用する場合は、オペレーティング・リースに該当するリース取引に対する使用権資産が含まれないようにする必要があるということになります。
データ収集等の便宜を考えると、重要性に応じて「使用権資産」か「その他」で表示するというのがよいのではないかと個人的には思います。