顧客紹介に係る謝礼と交際費
ビジネスガイド2020年12月号の「税務トラブルを防ぐための社内規程等の作成&見直しのポイント」の最終回で「顧客紹介に係る諸礼金の支給と交際費等」(税理士 小林俊道 氏)が掲載されていました。
紹介料の支払が交際費等に該当し、後の税務調査で損金不算入とされてしまう可能性があるという内容ですが、そうならない為には顧客紹介の対価の支払に関する契約書を締結しておくことが重要だとされています。
これは、租税特別措置法通達61の(1)-8で以下のとおり述べられていることによります。
61の4(1)-8 法人が取引に関する情報の提供又は取引の媒介、代理、あっせん等の役務の提供(以下61の4(1)-8において「情報提供等」という。)を行うことを業としていない者(当該取引に係る相手方の従業員等を除く。)に対して情報提供等の対価として金品を交付した場合であっても、その金品の交付につき例えば次の要件の全てを満たしている等その金品の交付が正当な対価の支払であると認められるときは、その交付に要した費用は交際費等に該当しない。
(1) その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること。
(2) 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること。
(3) その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること。
上記の基本的な建付は、情報提供を行うことを業としていない者に対して情報提供料を支払った場合には、原則として交際費等の支出があったものとする一方で、上記の(1)~(3)の要件を満たした場合には損金算入が可能となるということになっています。
特定の方から継続して顧客の紹介を受けるような場合には、契約書を締結していることが多いのではないかと思いますので、あまり問題とはならないかも知れませんが、お友達紹介キャンペーンというような感じで、顧客を紹介してもらった場合に現金やギフト券を提供するというようなケースでは契約書が締結されていることは考えにくく、このような場合はどうするのかですが、この点については以下のように述べられています。
紹介料の規約を設けたうえで、かかる規約を、例えば、来店する顧客の誰もが目にしやすいレジ周りに掲示したり、グリーティングカード化してあまねく配布したりすることも、そのようにして掲示や配布された規約の広告が契約の申込みであり、それに受諾をした”応募者”との間に有効な契約が締結されたとみなすこともでき、有効な「税務調査対策」となるはずです。
広く一般に告知するような場合は、その際の案内書やウェブページのコピーなどを保存しておけばよいというになりそうです。
また、この記事では、「新規顧客に対する役務提供の値引き販売」として、紹介者から紹介をうけた顧客が品物等を購入してくれた場合に、金銭以外の物品又は役務提供の一部サービスを行うケースが考えられるが、このような場合に交際費等の支出とされないように気をつけたいと述べられています。
通常は単なる売上値引だと考えられますが、「例えば、適当な(曖昧な)基準で、既存顧客からの紹介による新規顧客に対して自動車の整備代を値引いたり、あるいは値引かなかったりをしていると、場合によっては交際費等の支出に該当する可能性を帯びることになります」とされています。
その可能性はあるのかもしれませんが、現実問題として、紹介云々にかかわらず、特に高額な商品となればなるほど、購入時の値引き交渉の結果として、金額自体の値引きや、金額の値引きが難しければ保守サービスを無償でつけることなどは普通に行われていることだと考えられますので、これが問題となる可能性はかなり低いのではないかという気がします。