実費精算の残業食事代は給与課税されるか否か
所得税基本通達36-24では以下のとおり述べられています。
36-24 使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、課税しなくて差し支えない。(昭50直法6-4、直所3-8改正)
残業した従業員等に対して食事を支給した場合は、給与課税しなくてよいということですが、これは会社が社員食堂のような場所で食事を提供したり、弁当などの食事を用意して従業員等に提供した場合のみ認められるのか、合理的な金額を設定した上で、従業員が自分で購入等した食事の実費を領収書等に基づき精算する様な場合も認められるのかが問題となります。
仮に実費精算も問題ないということであれば、リモートワークであっても残業をするのであれば残業時の食事代を実費で精算していたとしても給与課税は不要ということになると考えられます。
この点、少し古い書籍ですが、「問答式源泉所得税の実務 平成30年版(上願 敏来編)」の「残業者に支給する食事」のQ&Aでは「(前略)また、当社の手間を省く意味で、現物支給に代えて残業者に食事代相当額の金銭を支給した場合はどうでしょう」という質問に対して「(前略)次に、現物に代えて残業者に支給する金銭については、夕食に充てるためとはいえ、金銭で支給される一種の手当ですから、上記の非課税の取扱いは適用されず、その全額について給与所得として源泉徴収の対象にする必要があります」と述べられています。
ここでいう「食事代相当額」と実費精算の関係は定かではありませんが、実費であれば実費精算とした方がわかりやすいですし、○○円相当といった場合、通常はそれくらいのものという意味で使われることが多いと思いますので、実費精算を意味していないととらえてよいのではないかと個人的には思います。
そもそも、会社が残業者に対して食事を準備した場合と、一定の金額の範囲内で従業員が自分で食事を調達し実費で精算するのは、実質的には同じようなものだと考えられますので、両者で取扱いが異なるのは不合理だと考えられます。
もっとも、会社が一律で準備した場合と、従業員が一定範囲で自ら調達した場合では、各人にバラツキは生じるという違いはありますが、会社が準備する場合であっても、値段の異なる数種類の弁当を準備するとか、おにぎりやパンをある程度の個数準備し、食べたい分をもっていくというようなケースの場合は各人の便益は異なるわけですので、やはり両者を区別することに合理性は感じられません。
また、以前”早朝出勤時に支給される朝食の課税関係”で取り上げた税務通信3532号の税務の動向に「早朝出勤時に支給する朝食の課税関係を支給方法別に整理」という記事では、従業員らが購入した朝食を企業が金銭で負担(精算)する方法によった場合についても「支給する金銭が、朝食の支給と同視できるのであれば、所得税基本通達36-24に該当し、「非課税」となる」とされていますので、残業食事代の場合も同様に考えてよいと考えられます。
上記のように考えると、リモートワークであれ、残業時に実費精算で食事代を支給しても福利厚生費等として処理することができるのではないかと考えられます。