KAMの個数は1個が7割超-経営財務誌調べ
経営財務j3515号・3516号の2回にわたりKAMの個数について2021年3月期の有価証券報告書で集計した結果が取り上げられていますが、3516号では、上場市場・売上高・業種別の平均個数についてまとめられていました。
結論としては、「上場市場や上場区分による顕著な違いはみられず、特に東証ではいずれも7~8割程度の会社においてKAMが1個」であったとのことです。ただし、売上高1兆円以上の連結のKAMについては、1個よりも2個とされた事例の方が多く、5千億円以上1兆円未満の会社も1個と2個がほぼ同じ社数となっていた点が特徴的とされています。
では、業種別にみた場合はどうかですが、この点については。空運業が3社で、3社ともそれぞれ3個のKAMが記載されているため平均個数が突出しているが、「その他の業種では1.0個~1.8個が平均」とされ、空運業を除くと業種別による大きな差はないようです。なお、「連結でKAMが1個だった会社より2個だった会社の方が多かった業種は、海運業とその他金融業」であったとのことです。
なお、業種別の平均個数をみると、平均は1.0個~1.8個となっていますが、業種別の会社数が100社以上の業種でみると平均は1.2個~1.4個となっています。ほとんど差はありませんが、100社以上の業種で平均個数が1.2個と少ないのは情報・通信業(192社)、反対に1.4個は小売業(114社)と電気機器(175社)となっています。売上高が大きいとKAMの個数が増える傾向にあるとのことですので、小売業や電気機器の平均個数が若干大きくなっているのはその影響なのかもしれません。
最後にKAMの個数が最も多かったのは5個という会社(輸送機器)が1社あったとのことです。4個の会社は12社で、このうち6社は日本基準適用会社、4社がIFRS適用会社、2社が米国基準適用会社となっています。
会計基準別にみると、日本基準適用会社ではKAMの個数が1個は全体の73%、2個が24%、3個3%であるのに対して、IFRS適用会社では1個が全体の46%、2個40%、3個11%とIFRS任意適用会社の方がKAMの個数は多い傾向があるようです。これも基準云々というよりは、IFRS任意適用会社は規模の大きな会社も多く、監査上の主要な検討事項も個数が増える傾向があるということだと思われます。
最後に、監査法人の規模別にみた場合にKAMの個数に差があるのかという点については、「平均個数の点では監査法人の規模による大きな違いはないようだ」(経営財務3515号)とされています。経営財務の記事では、大手、準大手、その他の区分でKAMの平均個数が集計されていましたが、1.3個~1.4個と大きな差は生じていませんでした。
もともとリスク回避的にあれもこれも書くという性質のものではなく、むしろ色々考えられる中で何をKAMとして記載するのかという方向で検討されることが多いと思いますので、監査法人の規模にかかわらず個数は1個~2個が多くなるということなのだと思われます。