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採用内定後のバックグラウンド調査と内定の取消-ドリームエクスチェンジ事件

ビジネスガイド2021年10月号の「労働判例の読み方」(弁護士 光前光一氏)でドリームエクスチェンジ事件が取り上げられていました。

裁判では、会社側に約178万円のバックペイが命じられ、会社はその後控訴したものの、控訴審で和解が成立したとのことです。

事件の概要は以下の通りとされています。

Y社は、平成28年10月頃、人材紹介会社に旅行部門(無期正社員)で旅行手配業務、新ビジネスの企画・立案・実行等を主な業務として、年収300万円~490万円で人材募集を行った。

この募集に応募したXは、平成8年3月に大学を卒業後A社(旅行業)に入社し、外国旅行の予約、手配、営業、商品企画等の業務に従事していたが、同26年8月に退社し、同年9月から平成28年12月末までB観光局(1年更新の契約社員)の「セールスマネージャー」としてハワイ渡航促進業務に従事していた。

Xは、平成28年10月頃、B観光局に退職意向を伝え、人材紹介会社の紹介で11月に応募、1次面接、2次面接を経て、Y社は平成29年1月1日入社(賃金月額35万円)で採用内定通知を平成28年12月にXに送付。

その後、Y社は人材紹介会社が、Xのバックグラウンド調査を実施していないことを知った。また、Xより会社が基礎的と考える予約発券システムの使い方のトレーニング申込があったことから、Xの能力に疑問を抱き、平成28年12月下旬に、Xに対してバックグラウンド調査を行うこと、その結果次第で内定を取り消すことがある旨を説明し、調査を行った結果、面接時のアピール内容が真実でないものとして、平成29年1月11日、内定の取消し、その翌日に賃金を月額25.8万円に減額した新たな採用通知を発行。

Xは、Y社従業員としての地位の確認と未払賃金の支払いを求め提訴。裁判所は、平成29年1月1日から同年7月9日までの未払賃金(4月10日からは4割控除)のみ認め、地位確認請求は却下。

会社が主張した争点は以下の四つとのことです。
①会社はXの職務労力等の詐称により誤解して内定通知を出したものだから、労働契約は錯誤無効。
②Xに求めていた職務能力は、幹部候補としての能力であるが、Xは職務能力・経歴、前職の退職理由等のいずれも詐称し、詐称事実は採用時には知ることができないものであったから、内定を取り消すことについて、客観的合理性、社会的相当性がある。
③会社は、詐称事実が判明したことから労働条件の変更をして出社を命じたが、Xは出社せず、その3か月後には他の旅行社に就職しているから、X会社で就労する意思はなく、本訴は権利濫用である。
④Xの主張が認められるにしても、バックペイの金額は、Xが他社から得た賃金を控除すべき。

上記の主張に対し裁判所は、採用内定の取消は、採用の当時知ることがことができず、また、知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができることに限られるとしたうえで、会社がXを幹部候補生として採用したという事実は賃金額からしても認めがたく、バックグラウンド調査の結果判明した事実から、Xが能力や経歴を偽ったとはまでは認めがたいとしました。また、予約発券システムの使い方のトレーニングの申入がXの能力不足を証明するものではないし、XにはB観光客での勤務が契約社員であったことを積極的に伝える義務もない。そもそも会社が主張している事実は、内定前に調査していれば容易に判明した事実であり、錯誤、内定取消の主張は認められない。
Xは、平成29年4月10日からC旅行者に勤務し、7月10日に使用期間を終了し、口頭弁論終結時点でも同社で就労していることから、7月10日はY社で終了する意思は失われていたと評価するのが相当であり、地位確認の請求は訴えの利益がないが、本件訴訟の提起の権利濫用とまで評価すべき事情があるとはいえない。
内定取消は無効であるから、Xは平成29年1月1日から7月9日までの賃金を請求できるが、C社での賃金を取得することとなった4月10日以降は、労基法26条の趣旨に基づきY社が合意した月額賃金(35万円)の6割相当額を請求できるとしたとのことです。

さて、この事案では採用内定を取り消すことになるかもしれないほど会社が重要と考えるバックグラウンド調査を会社が怠っていたという時点で会社の主張にはかなり無理な部分が生じることとなっていると思われます。人材紹介会社との契約に次第かもしれませんが、一般論として、応募者の職歴等は採用会社が確認すべき事項ですし、会社は2回面接した上で採用を決定していますので、人材紹介会社がバックグラウンド調査を行っていないことが事後的に判明したという言い訳はかなり厳しいと判断されると思われます。

この判決で、このように判断されるのかと興味深かったのは、他社で採用されたとしても、本採用
までの期間はバックペイ期間として認められたという点です。労働者からすれば、Y社で就職することが本来の目的であり、生活していかなければならないので他社に就職したにすぎないとすれば、当然ということなのかもしれませんが、同様の事案で地位確認の訴えが提起されている場合には、他社で就職しているからといって、潜在的なバックペイの期間を見誤ることがないように注意が必要なようです。

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