未払残業代の税務処理
最近では未払残業というよりは、残業代支払の有無にかかわらず長時間労働のほうが注目されているように思いますが、税務通信3470号の税務の動向で未払残業代にかかる税務処理が取り上げられていました。
1.所得税
所得税の取扱についは、どのような形態で支給されるかによって取扱が異なるとされています。すなわち、『企業が、未払いであった過年分の残業代について“一時金(精算金等)”として支給した場合、その課税年分は「支給日が定められているものについてはその支給日、支給日が定められていないものについてはその改訂の効力が生じた日」となる( 所基通36-9 )』とされています。
一方で、精算金ではなく、実労働時間に基づき“過年分の給与”として支給した場合には「本来支給すべきであった支給日の属するそれぞれの年分の給与所得」となります。(参考:国税庁タックスアンサー「№2509 給与所得の収入金額の収入すべき時期Q&A」)
精算金方式の場合、過年度の所得税額や住民税額について修正は不要ですが、従業員側は翌年の住民税に影響してきます。一方で、実労働時間に基づく場合は、残業代を支給した時点で過去の年末調整計算をやり直し、納付不足となっていた税額を支給した時の翌日10日までに納付する必要があるということになります。
私の感覚では、過去の未払残業代が問題となる場合、対象となる時間については、事後的に不明確な部分も多いこともあり、ある程度のところで両者歩み寄って和解するということが多いため、精算金として支給されるということの方が多いのではないかと思います。
2.法人税
法人税法場の取扱は、残業代の支給形態にかかわらず支給した期の費用として損金算入されます。これは、「残業代は、過去の労働に基因するものであるが、支給額の決定が当期であることからすると当期に債務が確定しているといえるため」とのことです。
なお、過年分の残業代の未払いは国税通則法23条(更正の請求)に定められているケースに該当しないため、更正の対象とはならないとのことです。
残業代の支給対象期間に課税所得が生じており、支給時に課税所得が生じていないと、会社としては厳しいですが、払うべきものを払っていなかったわけなので、諦めるしかないということでしょう。