四半期開示制度について「一定の結論」はどうなった?
2017年6月に公表された「未来投資戦略2017」において、四半期開示について「義務的開示の是非を検証しつつ、更なる重複開示の解消や効率化のための課題や方策等を検討し、来年春を目途に一定の結論を得る。」とされていましたが、2018年6月28日に公表されたディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)報告において「一定の結論」が示されていました。
結論としては「現時点において四半期開示制度を見直すことは行わ」ないとされています。経産省の資料からは四半期をなくしたい感が漂っていたので、もしかしてと期待していましたが、「今後、四半期決算短信の開示の自由度を高めるなどの取組みを進めるとともに、引き続き、我が国における財務・非財務情報の開示の状況や適時な企業情報の開示の十分性、海外動向などを注視し、必要に応じてそのあり方を検討していくことが考えられる。」となっています。
このような結論は、以下の点を考慮したとされています。
- 中長期の視点で投資を行う観点からも進捗確認の意義を認める見解が大勢である
- 現状、非財務情報など中長期的な企業価値向上の観点から特に重視される情報の開示が必ずしも十分とは言えないこと
- 半期・四半期のみならず、重要な企業情報の開示が全体として適時に行われる枠組み・ガバナンスが必ずしも十分とは言えないこと
- 情報開示により市場の価格形成がより効率的に行われるようになっているとの指摘が
あること - このような状況において、例えば、四半期開示を任意化した場合、開示の後退と受け取られて我が国の資本市場の競争力に影響を及ぼしかねないと考えられること
ちなみに、諸外国の状況については以下の通りとなっています。
海外の四半期開示制度に関する動向としては、英国、フランスでは、それぞれ 2014 年、2015 年に四半期開示義務が廃止されたが、英国では FTSE100 の半数以上が、フランスではユーロネクスト・パリの A・B 部の約8割が、任意で四半期開示を継続している。また、ドイツにおいては、2015 年に法律上の四半期開示義務が廃止されたが、取引所規則によって四半期開示義務が継続している55。米国においては、1970 年の導入以来、現在も四半期開示義務が継続している。
それにしても「半期・四半期のみならず、重要な企業情報の開示が全体として適時に行われる枠組み・ガバナンスが必ずしも十分とは言えない」というのは外国人投資家にきちんと説明してあげたほうがよいのではないかと思います。