顧客満足度の向上は会社の業績を向上させる?-「J.D.パワー 顧客満足のすべて」
顧客満足度(CS)を改善させるという取組は多くの企業で実施されていますが、顧客満足度を向上させれば会社の業績は向上するかが今日のテーマです。
なぜこんなことを考えたのかというと、べイン・アンド・カンパニー・ジャパンのパートナーである森光威文氏が、顧客ロイヤルティを取り上げたある番組内で、顧客満足度指標と成長率には明確な相関はないと解説しているのを聞いたことによります。
直感的には顧客満足度を向上させれば会社の業績も良くなりそうですが、様々な顧客満足度調査で1位になっている企業は業績でも1番なのかというと必ずしもそうではないというのも直感的に感じました。
森光氏の話は、フレッド・ライクヘルド氏の「顧客ロイヤルティを知る究極の質問」をベースにした話で、同書での究極の質問とは「あなたが弊社を親友や同僚に推薦してももらえる可能性はどのくらいあるか」というものとのことですが同書はAmazonで検索したところ中古でのみ入手可能で価格も5000円位したので、とりあえず、「J.D.パワー 顧客満足のすべて」という本で顧客満足について確認してみようとしました。
(なお、その後しばらくしたら2000円前後で中古がいくつか出品されたので、購入できました。先ほど確認したら配送まで6週間位かかると表示されていますが新品もあるようです)。
「J.D.パワー 顧客満足のすべて」という書籍は、基本的に顧客満足度の向上こそが業績の向上につながるというスタンスで書かれた本です。
しかしながら、顧客満足度を高めれば必ず業績がよくなるというわけではなく、顧客満足度を高めることが顧客の行動を変化させることに結びつかなければ意味がないとも説明されています。
同書では、顧客は推奨者、無関心者、刺客の三つに区分されています。推奨者が積極的にその会社の商品やサービスを人に薦め、口コミ効果などにより会社の業績向上に貢献する顧客のことを意味するのは想像できると思いますが、面白いのは「無関心者」の定義です。
同書では、「無関心者」を「満足しただけの顧客」と定義しています。つまり、満足している「だけ」の顧客は「無関心者」も同じということで、無関心者の特徴について以下のように記載されています。
・満足しただけの無関心者は、忠誠心は若干あるが、商品やサービスの購入や使用に伴う不便さに耐えたり、価格プレミアムを支払ったりするほどではない。
・無関心者は他社からの勧誘に弱い。マイレージプログラムや高利率、多額のリベート、無償グレードアップなどで、乗り換える気を起こす可能性は十分にある。
・無関心者は沈黙する。自分の経験について良くも悪くも言及しない傾向がある。
商品などの満足度のアンケートで「すごく満足している」あるいは「満足している」に〇をつけたとしても、大半の人間は上記でいうところの「無関心者」に区分される顧客なのではないかと思います。少なくとも「すごく満足している」という選択肢があって、「満足している」を選んだような場合は、実質的には“不満はない”という程度と捉えたほうが無難だと考えられます。
ちなみに刺客についてもいくつか特徴が述べられていますが、そのうち一つだけ紹介しておきます。
・刺客は強い主張をする。その企業とは付き合わないように説いて回り、ブランドの足を引っ張る。当社の調査によれば、刺客が自分の不愉快な経験を人に話す傾向は、推奨者が良好な経験を人に話す傾向より50%高い
話を無関心者に戻しますが、無関心者には一定のレンジがあって、満足度がそのレンジを良い方向に超えれば推奨者に、悪い方向に超えれば刺客になると説明されており、個人的に納得できます。
そう考えると、無関心者の範囲内で顧客満足度を向上させる取り組みが、業績の向上という目に見える成果につながらないことになり、顧客満足度が上がったからといって必ずしも業績が向上するわけではないということになります。
結局のところ、「推奨者」に該当する顧客を増やすような取り組みを行うことが必要と言えますが、そのような取り組みを行う際に顧客の声を収集する際には、やみくもに情報を収集するのではなく、なぜ情報が必要なのか、社内の誰が必要としているのか、その情報からどのような意思決定を導き出す必要があるのかを問うことから始めるのが重要だと説明されています。
顧客満足度については、様々なものが各種雑誌等で発表されており、前年との比較が載っていたりしますが、顧客満足度の推移と業績の推移を合わせて載っているようなものは見たことがないのでそのような顧客満足度調査も見てみたい気がします。
費用対効果を考えて顧客満足向上の取り組みを行うとすると、業績との相関の高い顧客満足度が測定できる必要があると考えられますが、「J.D.パワー 顧客満足のすべて」では、著者が顧客満足度の調査を本業にしている企業のプレジデントだからでしょうが、顧客満足度調査の方法自体についてはほとんど述べられていません。
そのような指標となりうる「顧客ロイヤルティを知る究極の質問」の内容が楽しみになってきました。
日々成長