「大停滞」-タイラーコーエン著
少し前の本ですが、米国で話題となったということで「大停滞」(タイラーコーエン著)の紹介です。
基本的に米国が景気後退からいつまでたっても抜け出せない原因について述べられている本です。その原因とは、「容易に収穫できる果実」をほぼ食べつくしてしまったためというものです。
「容易に収穫できる果実」とは
①無償の土地
②イノベーション
③未教育の賢い子どもたち
だそうです。
①は、19世紀末まで、米国には肥沃な土地がふんだんにあり、自由に利用できたので、ヨーロッパから移住した人土地は新天地で働き、祖国にとどまった農民たちとは対照的に生活水準を高めることができたということです。
②は1880年から1940年にかけて、数々の目覚ましい新技術が生活に取り入れられたが、物質的な面に限ると1953年以降はそれほど生活に大きな変化はないということです。
③は、1900年の米国では、高校卒業年齢の人口に占める高校卒業者の割合が6.4%であったのが、1960年には60%と、60年で10倍程度に上昇した。つまり、20世紀初めには、適切な教育をうけららない隠れた天才が大勢いたため、そのような若者が高校に通うようになることで経済の生産性を大幅に向上させる要因となったが、21世紀にはこのような進歩が期待できないということです。
そして、1970年代頃までに上記の容易に収穫できる果実のかなりの部分が食べつくされてしまったとしています。
それでは、どうすればいいのかという点については、「科学者の社会的地位を高めよ」というのが筆者の主張のようです。というのは、三つの好ましい変化が既に始まっており、この傾向を亜通りすることで、将来「容易に収穫できる果実」が手に入ると期待できるためとしています。
三つの好ましい変化とは、
①インドと中国における科学と工学への関心の高まり
②インターネットが従来より収入を生むようになる可能性があること
③米国の有権者の間で、高校までの初等・中等教育の質を向上させるべきだと考えている人が増えていること
とのことです。
米国で話題になったというので目を通しましたが、それほどのインパクトがある本と言えるのかは微妙というのが個人的な感想です。
日々成長