資産除去債務の簡便法で割引を行っている事例
以前の”資産除去債務の簡便法(敷金償却)で見積もりを変更した場合の処理等”というエントリで記載しましたが、資産除去債務の簡便法を使用している場合、割引計算は行わないというのが一般的だと考えられます。
しかしながら、簡便法で処理を行っているケースで割引計算を行っている(割引率を開示している)事例があったので紹介します。
一建設株式会社(平成25年1月期)
資産除去債務関係の注記で、当該資産除去債務の概要として以下のように記載されています。
当社では、営業所店舗等の不動産賃貸借契約に基づく退去時における原状回復に係る債務を有しておりますが、敷金が計上されているため、資産除去債務適用指針第9項の規定する方法(資産除去債務の計上に代えて、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法)で処理しております。
上記のとおり簡便法を採用しているわけですが、「当該資産除去債務の金額の算定方法」として「使用見込期間を取得から7~33年と見積り、割引率は0.695~2.071%を使用して資産除去債務の金額を計算しております。」と記載されており、さらに「当該資産除去債務の総額の増減」は以下のようになっています。
資産除去債務に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第21号)の27項(結論の背景)では、簡便法が認められた理由の一つとして「建物等の賃借契約において敷金を支出している場合、賃借建物等に関連する資産除去債務とこれに対応する除去費用を負債及び資産として両建処理すると、敷金と資産除去債務に対応する除去費用が二重に資産計上されるという見方もある」と述べられています。
この点を重視すれば、簡便法は資産と負債の両建て計上を防止するということが目的であり、計算方法については原則法と同様にすべきという解釈もありえると考えられます。もっともこのように解釈すると上記に続いて記載されている「資産除去債務に係る実務負担を考慮し」という部分の意味が通らなくなるので、やはり簡便法での割引計算は想定されていないと考えるのが無難だと考えられます。
割引計算まで行っているにもかかわらず原則法ではなく簡便法を採用しているめずらしい(?)事例でした。
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