消費税(その11)-課税売上割合の算出1
消費税の計算方法として個別対応方式を採用した場合、「課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの」のうち仕入税額控除できる金額は、「課税売上割合」によって決まります。
従来は、課税売上割合が95%を超えていれば、全額仕入税額控除可能であったため、このラインを超えるかどうか微妙という場合でなければ、課税売上割合の計算についてそれほどシビアに考える必要はありませんでした。
ところが、今後は課税売上割合が0.1%でも変動すれば、仕入税額控除とすべき金額が変わってしまいますので、課税売上割合を正確に算出することが重要となります。そこで、まず課税売上割合の算出方法について確認します。
1.課税売上割合の算出方法
課税売上割合は消費税法第30条6項において、「当該事業者が当該課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちに当該事業者が当該課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合として政令で定めるところにより計算した割合をいう」とされています。
これだと分かりにくいですが、これを簡単な算式に置き換えたものが、国税庁のタックスアンサーで以下のように示されています。
ただし、計算における注意点として、「総売上高と課税売上高の双方には、輸出取引等の免税売上高及び貸倒れになった売上高を含む」ことや「売上げについて返品を受け、又は値引、割戻し等を行った場合は、それらに係る金額を控除」することなどが注書きされています。
というわけで、上記の式を少し分解すると以下のようになるといえます。
分母から明らかなように非課税売上にも注意を払わなければならないことになります。 従来から課税売上割合が95%未満になれば、全額仕入税額控除が認められなくなるので非課税売上に注意していなかったということはないと思いますが、ひとつ具体例で考えてみます。
ここで考えるのは、会社が住宅を借り上げて、従業員に社宅として使用させており、従業員から会社が家主に支払う賃料の半分程度を徴収しているケースです。
このケースにおいて、従業員から徴収する社宅使用料をどのように経理処理しているかが間違いやすいかどうかのポイントです。
というのは、従業員から徴収した使用料を控除した金額が実質的な地代家賃であるという考え方から、従業員負担分を地代家賃等の費用項目のマイナスとして経理処理することがよくあるためです。従業員の負担分を雑収入等の収益項目で計上している場合、従業員負担分は住宅の賃料として支払われるものなので非課税売上となります。
収益として計上しようが、費用のマイナスとして処理しようが、消費税法上の取扱いは変わらないので、費用項目のマイナスとして経理処理している場合は、この金額を非課税売上として正しく捕捉する必要があります。
ここが従来と比べると面倒な点です。従来であれば、社宅賃料の従業員負担分を非課税売上として正しく捕捉してもしなくても、課税売上割合が95%を下回るほどの影響はないということであれば、どう処理していても実質的に影響はなかったといえます。
しかしながら、今後は課税売上割合が正しく計算されないことになってしまい消費税額に影響がでるので、問題が生じるわけです。
そのため、経理処理としても記帳は雑収入等で計上しておき、財務諸表作成時の表示組替で対応するというような処理に変更することを検討する余地がありそうです。
2.非課税取引
上記のとおり、非課税売上をきちんと把握しなければならないわけですが、そもそも非課税取引とされているものにはどのようなものがあるのかについて確認します。
消費税法上、非課税取引とされているものは大きく以下の二つに分類されます。
(1)消費税という性格上、課税対象とすることがなじまないもの
(2)社会政策的配慮から非課税とされているものの
それぞれ以下のような項目が該当します。
(1)消費税という性格上、課税対象とすることがなじまないもの
(2)社会政策的配慮から非課税とされているものの
非課税取引とされる項目は、限定的なので課税か非課税かを間違えるというよりも、前述の社宅負担金のように経理処理方法に起因して間違ってしまうというリスクの方が高いように思います。
長くなりましたので、今回はここまでとします。
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