農林水産品の輸出1兆円目標って、何を増やすの?
2013年4月24日の日経新聞朝刊に「耕作放棄地を強制集約、政府・自民方針、都道府県、全農地の1割再生」という記事が掲載されていました。
内容は「放置された農地を都道府県が強制的に借り、集約して農業生産法人などに貸し出す制度を来年度にも導入」して「生産性の高い大規模農業への転換を促す」というものです。
この記事によると、「1年以上何も作らず、耕作を再開する見込みもない耕作放棄地は全国で40万ヘクタールと滋賀県に匹敵する規模に膨らんでいる。」そうです。そして「20年までに農林水産品の輸出を現在の倍の1兆円に増やす目標も提示。生産から加工、販売までを担う6次産業化も進める。」とのことです。
「放置された農地を都道府県が強制的に借り」るのが、有料なのか無料なのかが明確ではありませんが、普通に考えれば有料でしょう。農地の集約を図って効率的な農業を行うという点については、農産物の価格が安くなるはずなので消費者の立場からするといいことだと感じますが、一方で「放置された農地」から「賃料」を得ることができるというのは「農家」が優遇されすぎている気がするのも事実です。
このような制度を導入する前に、農地を放置したまま所有する場合には固定資産税や相続税の優遇が受けられなくするような仕組みをまず導入すべきではないかと個人的には思います。しかし、こんなことを言い出したら農家の方々の大反対にあって選挙に勝てませんから、政治家には期待できそうにありません。
「放置された農地」からキャッシュが生まれれば、それに反対する人はいませんよね。捨てようと思っていたものをお金を払って買ってくれる人がいた感じに似ているのではないでしょうか。
もう一つ気になったのは、2020年までに「農林水産品の輸出を現在の倍の1兆円に増やす」というものです。ということは、現在でも農林水産品の輸出が5000億円もあるということになりますが、5,000億円も何を輸出しているのか気になったので調べてみました。
農林水産省が開示している農林水産物輸出入情報(平成24年12月分(確定値))によると、平成24年1月~12月の農林水産物の輸出金額は4,496億円となっていました。大きな区分で内訳をみると、以下のようになっています。
・農産物 2,680億円
・林産物 118億円
・水産物 1,698億円
ということは、農産物の輸出を増やして1兆円を達成しようとすると、現状の約3倍の水準にならないということになります。
農産物の輸出額をブレークダウンすると、畜産品が295億円、農産品が2,384億円となっています。さらに農産品の内訳を示すと以下のようになっています。
農産品の約半分は「その他の調製食料品・飲料」が占めています。これは何か?主に調味料、アルコール飲料、清涼飲料水などが含まれています。清涼飲料水等は、その他(でん粉・イヌリン)という項目に含まれていますが、「でん粉・イヌリン」という項目は出ていませんので、金額的には大きくないと推測されます。
嗜好食品は、お菓子やコーヒーなどです。その次に、ようやく「その他農産物」という項目が登場しますが、335億円という規模です。ここに含まれているもので大きいのは、植木や野菜の種です。
全体からみるとかなりマイナーな項目になってきたので、一般的なイメージいうところの農産物で主な輸出品は何かを確認してみると、金額が比較的大きいのは以下のようなものです。
・小麦粉 58億円
・米 28億円
・リンゴ 33億円
・ながいも等 17億円
5000億円増は相当難しいのではないでしょうか・・・
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