2017年4月から2018年2月期の会計方針の変更は29社・30件
経営財務で定期的に取り上げられている会計方針の変更に関する記事が経営財務3367号に掲載されており、当該記事によれば、日本基準を採用している2017年4月~2018年2月期決算の上場会社で会計方針の変更の注記を行っていたのは29社・30件であったとのことです。
2016年4月から2017年2月期の調査では42社・45件(経営財務3322号)となっていましたので、13社の減少となっていますが、この減少は主に有形固定資産の減価償却方法の変更を行った会社の社数の差によるものとなっています。
両年とも定率法から定額法に変更した会社のみとなっていますが、前年同期が27社であったのに対して2017年4月~2018年2月期では11社と16社の減少となっています。
3月決算会社が大多数となっている中で、半分以下に減少しているので、普通に考えると定率法から定額法への変更を既に実施済みの会社が増えていることによる減少と考えられますが、3月決算会社でも落ち着いたかと思いきや増えたりしているので、それほど深い意味はないのかもしれません。
2017年4月~2018年2月期で定率法から定額法に変更を行った会社の社名は省略しますが、この中にコカ・コーラボトラーズジャパンが含まれています。定率法から定額法へ変更をするのであれば、もっと早くに実施していそうな感じがしたので意外な感じがしました。
収益認識にかかる会計方針を変更しているのは、クスリのアオキホールディングス(あずさ)とイトクロ(新日本)の2社となっています。
クスリのアオキホールディングスでは以下の注記がなされています。
2017年5月期 クスリのアオキホールディングス
(会計方針の変更)
(売上高の会計処理方法の変更)
当社の連結子会社であるクスリのアオキは、従来、コンセッショナリー部門における取扱高を、「売上高」及び「売上原価」として計上しておりましたが、コンセッショナリー部門の取扱高の増加に伴い、「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)<日本公認会計士協会:会計制度委員会研究報告第13号>」等を踏まえ、取引内容を再検討した結果、経営成績をより適切に表示するため、当連結会計年度より利益相当額を売上高に計上しております。当該会計方針の変更は遡及適用されておりますが、当連結会計年度の期首残高に与える影響はありません。
グロス計上かネット計上かを見直したということで、上記では研究報告第13号が掲げられていますが、収益認識基準も踏まえたものであると推測されます。「当該会計方針の変更は遡及適用されております」ということなので、どれくらいの影響があったのかは、1年前の有報と比較しろということなのかと思って連結PLを確認してみると以下のようなPLとなっていました。
ちょうどホールディングになったタイミング(単体→連結)に合わせて会計方針を変更したようです。いったいどれくらいの影響があるのかについては、特に記載はされていないようです。
一方、イトクロでは以下のように注記されています。
2017年10月期
(会計方針の変更)
(売上高の計上基準の変更)
当社は、従来、コンサルティングサービスの一部売上(リスティング運用売上、アフィリエイト売上)において売上原価に計上していたリスティング費用及び他のサイト運営会社に支払う成果報酬費用を、当事業年度より、売上高から控除する方法(純額表示)に変更いたしました。
この変更は、メディアサービスの事業展開を一層推進する当社の経営方針の下、メディアサービスの附帯サービスであるコンサルティングサービスの一部売上高(リスティング運用売上高、アフィリエイト売上高)が急増している中で、当該一部売上高を純額表示に変更しなければ企業実態を適切に表示することは困難であるとの認識に基づいております。この認識に加えて、全ての事業にわたって、経営成績の重要指標のひとつである売上高の計上基準を見直すべく、収益の定義・範囲・会計処理等についての実態調査の上、業務プロセス検討・システム構築等の体制整備を進めてまいりました。当事業年度においてその準備が整ったことにより変更するものであります。
当該会計方針の変更は遡及適用しており、前事業年度については遡及適用後の財務諸表となっております。この結果、遡及適用前と比較して、前事業年度の「売上高」及び「売上原価」はそれぞれ1,251,795千円減少しておりますが、「売上総利益」、「営業利益」、「経常利益」、「税引前当期純利益」及び「当期純利益」に与える影響はありません。なお、前事業年度の期首の純資産に対する累積的影響額はありません。
こちらもグロス計上をネット計上に変更するというもので、前事業年度の遡及修正前の売上高は約47億円でしたので、この変更により売上高が1/4程度減少しています。利益に影響はないものの、ここまでのインパクトがあるとぱっと見の印象は随分かわるのではないかと思われます。
収益認識基準の適用により、今後このような変更は増えるのかもしれません。