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改正民法(その3)・・・危険負担

今回は改正民法の危険負担についてです。

危険負担は、売買等の双務契約が成立した後に、債務者の責めに帰することができない事由で目的物が滅失・毀損等してしまったことにより履行不能となった場合において、そのリスクを当事者のいずれが負担するかという問題のことです。

現行民法534条1項では、特定物に関する物件の設定又は移転を双務契約の目的とした場合等においては、債務者の帰責事由なくその物が滅失又は損傷したときでも、債権者の負う反対給付債務は存続するものとされています。

したがって、不動産売買において売買契約締結後引渡し前に、双方に帰責事由がない理由(地震や隣家の失火)によって目的物が消失してしまったような場合には、買主の代金支払義務は消滅しないというのが原則ということになっています。

ただし、これだと不動産売買契約がスムーズに締結できないので、危険負担については契約上の特約によって、売主が負担するとするのが通常です。

とはいえ、「特定物に関する物件の設定又は移転を目的とする双務契約における危険負担について、いわゆる債権者主義を採用していたが、当事者間の公平に反するなどとして、かねてより強い立法論的批判があった」(「実務解説 改正債権法」日本弁護士連合会編)とされ、改正民法では現行民法534条の規定は削除されました。

また、現行民法535条では、停止条件付双務契約において条件成就が未定である時点で目的物が消滅した場合は債務者主義、損傷した場合には債権者主義による旨が定められていますが、このような区分の合理性は乏しいなどの理由により規定が削除されました。

また、現行民法536条(債務者の危険負担等)は、以下のように改正されました。

(債務者の危険負担等)
第536条
1.当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2.債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

現行民法536条1項では、債権者の反対給付債務も消滅することとされていますが、前回取り上げた解除で述べたとおり、改正民法では、当事者双方の帰責事由によらずに債務者の債務が履行不能となった場合であっても、債権者は契約を解除できるようになっており、整合性を図るため「反対給付の履行を拒むことができる」とされたとのことです。

なお、民法改正の検討においては、解除のみに一本化することも検討されたとのことですが、「債務者の帰責事由によらずに履行不能となった場合、債権者は解除の意思表示を債務者に到達させなければ自己の反対給付債務を免れることができず、当事者間の公平を害するという指摘や、解除権の不可分性(改正法544条)等により、債権者に不都合が生じるおそれがあるという指摘がなされた」とされ、最終的に改正法のようになったとのことです。

最後に、「雇用契約に関して、判例・通説は、改正前民法536条2項を根拠として、使用者の責めに帰すべき事由により労務の履行が不能となった場合に、具体的な報酬請求権が発生する」と解していましたが、2項の文言が「反対給付の履行を拒むことができない」と改められたことから、「改正前の解釈と同様に、使用者の責めに帰すべき事由により労務の履行が不能となった場合の具体的な報酬請求権の発生根拠たり得るのかが問題となるが、改正後の本条2項の文言からも報酬請求権の発生を基礎付けることは可能であり、改正前の通説・判例の解釈を変更するものではないと解される」とのことです(「実務解説改正債権法」日本弁護士連合会編)。

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