2019年8月30日に証券取引等監視委員会より2018年度の「証券取引等監視委員会の活動状況」が公表され、それによると、開示規制違反に関する課徴金納付命令件数は10件で、直近5年では最多であったという旨の記事が経営財務3423号に記載されていました。
開示規制違反に関する課徴金納付命令勧告件数は10件で直近5年で最多とのことですが、どのくらいの件数で推移していたのかを「証券取引等監視委員会の活動状況」の「附属資料編」で確認したところ、以下のように推移していました。
2014年度 8件
2015年度 6件
2016年度 5件
2017年度 2件
2018年度 10件
件数ベースで前年度と比較すると5倍と大幅な増加となりますが、どちらかといえば昨年度の水準が低かったというほうが妥当な感じがします。なお、2018年度に告発されたのは3件とのことです。
10件の勧告のうち、9件が「売上の過大計上による有価証券報告書等の虚偽記載」によるもので、このうち3件は、実在しない架空の商流に加わり架空売上の計上を行ったものとのことです。
各社の勧告の対象となった法令違反等の内容は開示されている資料を見るとわかるので、社名と対象となっている開示書類、当時の監査法人などをまとめると以下のとおりです。
①五洋インテックス株式会社(東証ジャスダック)
平成27年3月期有価証券報告書
売上の過大計上
課徴金額600万円
監査法人コスモス(平成27年3月期)
②株式会社UKCホールディングス(東証1部)→現)レスターホールディングス
平成27年3月期有価証券報告書から平成29年3月期第3四半期報告書まで
貸倒引当金の過少計上(全期間)、売上の過大計上(平成29年3月期第3四半期報告書のみ)
課徴金額1,800万円
あずさ監査法人(平成27年3月期)→平成31年3月期まで継続し、現在トーマツに交代
③株式会社省電舎ホールディングス(東証2部)
平成26年3月期有価証券報告書から平成29年3月期第3四半期報告書(すべてではない)
売上の過大計上・費用/損失の未計上など
課徴金額3,442万円
アーク監査法人(平成26年3月期)→平成27年3月期にアスカ監査法人、平成30年3月期に個人事務所へ交代
④昭光通商株式会社(東証1部)
平成27年12月期第1四半期報告書~平成29年3月期第3四半期報告書(すべてではない)
売上の過大計上、のれん減損の不計上、貸倒引当金の不計上など
課徴金額2400万円
あずさ監査法人(平成27年12月期1Q):現任
⑤トレイダーズホールディングス株式会社(東証ジャスダック)
平成29年3月期有価証券報告書~平成30年3月期第3四半期報告書
売上の過大計上、のれんの減損損失の不計上、棚卸資産の過大計上
課徴金額1億3170万円
明誠監査法人(平成29年3月期):現任
⑥株式会社ストリーム(東証2部)
平成26年1月14日に提出した有価証券届出書に関連して、当該届出の効力が生じることとなる平成26年1月30日前において「届出書類に記載すべき重要な事項」の変更があったにもかかわらず、訂正届出を提出せずに募集により有価証券を取得させた
課徴金額1391万円
⑦東邦金属株式会社(東証2部)
平成26年3月期第3四半期報告書~平成27年3月期有価証券報告書
売上の過大計上、貸倒引当金の不計上
課徴金額1200万円
新日本監査法人(平成27年3月期)→令和2年3月期より監査法人和宏事務所に交代
⑧神栄株式会社(東証1部)
平成28年3月期有価証券報告書~平成29年3月期有価証券報告書
売上の過大計上、貸倒引当金の不計上
課徴金額1200万円
あずさ監査法人(平成28年3月期):現任
⑨株式会社ディー・エル・イー(東証1部)
平成27年6月期第3四半期報告書~平成30年6月期第3四半期報告書
売上の過大計上
課徴金額1億3540万円
あずさ監査法人(平成27年6月期)→令和元年6月期第1四半期まで継続し、第2四半期からアスカ監査法人に交代
⑩株式会社RS Technologies(東証1部)
平成27年12月期第3四半期報告書~平成27年12月期有価証券報告書
売上の過大計上、貸倒引当金の不計上
課徴金額600万円
あずさ監査法人(平成27年12月期):現任
上記10社について、当時の監査法人を確認してみると、大手では、あずさ監査法人が目立つ結果となりました。それほど深い意味はないと思いますが・・・