新型コロナウイルス感染拡大により本社移転件数は増加している?
少し前にパソナが淡路島に本社機能を移転するとして話題となりましたが、本日(2021年1月21日)の適時開示情報で、クックパッドとオールアバウトが本社移転に関する適時開示をおこなっているの確認しました。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う在宅勤務の拡大などによりオフィススペースを見直すとかいう話は一般論としてはよく耳にしますが、上場企業でどれくらいの会社が本社を移転(あるいは移転を予定)しているのかを確認してみました。
まず、本日適時開示を行っていたクックパッド株式会社は恵比寿ガーデンプレイスから横浜みなとみらいの「WeWork オーシャンゲートみなとみらい」に移転を予定しているとのことです。主な移転理由としては、「つくり手、生活者との物理的距離を縮め、料理に関する様々な課題に迅速に対応すること、COVID-19 が当面の間続くことが想定される環境の中でも、職住近接の実現が可能で、オフィスに集まって物理的な環境を活用した働き方を作り上げることが重要であると考え、それが実現できる場所として神奈川県横浜エリアを移転予定先に定めました」と述べられています。
一方、オールアバウト株式会社も本社は渋谷区恵比寿にありますが、こちらは渋谷区内で移動を計画しているとのことです。移転理由は「現オフィスの賃貸借契約が満了するにあたり、新型コロナウイルス感染症対策や働き方の多様化に対応した新オフィスを設計し移転するもの」としています。
さらに直近1か月の適時開示情報を検索してみたところ、以下の10社が本社移転に関する適時開示を行っていました。
①ファーストロジック(サービス・東一)
同社の本社は現在東京ミッドタウン日比谷とされていますが、中央区八丁堀にある住友不動産八丁堀ビルに移転するとのことです。移転理由は「最近のオフィス市況の状況を考慮して」とされ、「当該移転によって地代家賃が年間 125 百万円削減される予定」とのことです。
②株式会社パワーソリューションズ(情報・通信業、東マ)
現在の本社は千代田区大手町とされていますが、千代田区九段に移転するとのことです。移転理由については、「新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、当社の勤務形態は、出社を前提したものからリモートワーク中心のものに大きく変化しました。リモートワークの継続と居住地の制約がなくなることを受け、本社オフィスについては大幅に縮小しても業務に支障が無く、一方で固定費の削減効果が大きいと判断し、移転することといたしました。」と述べられています。
③オーケーエム(機械・東二)
同社の本社は滋賀県蒲生郡にありますが、滋賀県野洲市に移転するとのことです。移転理由は「本社機能・開発機能・マーケティング機能を集約し、事業のスピード化を図ることを目的といたします。」とされています。
④スズテン(卸売業・東二)
現在の本社は港区芝浦にありますが、千代田区外神田に移転するとのことです。移転理由としては以下の様に述べられています。
「現本社は顧客満足度向上に向けた業務を遂行するために執務スペースをワンフロアに集約し、社員のコミュニケーションの円滑化を図ってまいりました。しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症拡大によって、ワンフロアの環境下で感染者が発生した場合、感染が広まり事業活動に影響を及ぼす可能性が考えられます。
この状況を踏まえて、執務スペースの分割およびソーシャルディスタンスを確保できる複数フロアからなる建屋へ移転することを決議いたしました。
今後も、社員にとって安全で安心な職場環境の維持に努めてまいります。」
ワンフロアに集約できるのであれば、働いている方も何かと便利ですが、こういう状況だとそうも言ってられないということのようです。
⑤ダイナミックホールディングス(小売業・東二)
東京都新宿区から港区台場に移転を予定しているとのことです。移転理由は、「本社の賃料圧縮を図るため、現在の本社オフィスから面積縮小を伴う本社移転を行うこととしました」と述べられています。
⑥パスコ(空運業・東一)
東京都目黒区内で本社を移転するとされています。移転理由は「都内7か所に分散している各部門を集約し、シナジー効果の推進と意思決定の迅速化を図るとともに、従業員相互のコミュニケーション促進と「ニューノーマル」を前提とした新たな働き方に対応し、従業員一人ひとりの健康と働きがい、生産性の向上を図り、企業価値向上を図るため。」とのことです。
⑦enish(情報通信・東一)
東京都港区内で移転を予定しているとのことです。同社は「収益構造の最適化の観点でリストラクチャリングを推進しており」、「テレワーク(在宅勤務)制度の導入・活用により」、六本木ヒルズ森タワーからラピロス六本木に本店を移転したばかりですが、さらに「より小さなオフィスで対応することが可能と判断し、賃料圧縮も図れることから、ラピロス六本木から本店を移転する方針といたしました」と述べられています。
⑧MCJ(電気機器・東二)
同社の登記上の本社は埼玉にありますが、東京本社を東京都中央区日本橋から千代田区大手町に移転するとのことです。
移転理由は、「当社グループの今後の事業拡大を見据えた業務効率向上並びにテレワークを取り入れた新しい働き方の実現を目指し、移転することを決定いたしました。」と述べられています。
⑨バリューコマース(サービス業・東一)
東京都港区から東京都千代田区に本社を移転するとのことです。移転理由は、以下の様に述べられています。
「新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、当社の勤務形態は、出社を前提したものからリモートワーク中心のものに大きく変化しました。現在の出社率は2割程度でありますが、事業運営に特段の支障はなく、従業員にとっては働く場所と時間の自由度を高める新しい働き方につながることから、今後もこの業務体制を継続する予定です。
上記を踏まえ、当社は、当社オフィス面積の縮小のほか、当社グループ全体の経営効率化のため、当社連結子会社であるダイナテック株式会社の本社も移転できる場所として、新所在地に本社を移転することを決議いたしました。」
⑩KIYOラーニング(サービス業・東マ)
東京都千代田区内で本社を移転するとのことです。移転の目的は「現在2室ある収録スタジオを3室に増設し、個人向け事業であるスタディング、法人向け事業であるエアコースの需要拡大への対応スピードを上げることに加え、事業拡大に向けた社員の増員や顧客の利便性向上などを図ることにより、事業のさらなる競争力強化を目的とするもの」とのことです。
こうしてみると、新型コロナウィルスの感染拡大に対応するための在宅勤務等がきっかけになっているケースもそれなりにありますが、移転先という意味では従来とそれほどかわった傾向があるという感じはしません。明確には書かれていませんが、文脈的には移転先のオフィスのほうが面積が小さくなっているというケースが多いようには思います。
ちなみに、2020年4月1日以降で検索してみたところ65社がヒットしましたが、同様に2018年4月1日~2019年3月31日で検索してみたところ76社がヒットしたことから、今のところ新型コロナの影響で本社移転の件数が大きく増加しているということはないといってよいのではないかと思います。