監査役協会-監査役会への監査役選解任件の付与等を提言
2019年10月11日に日本監査役協会は、関西支部の監査実務研究会が8月7日付で作成した報告書「監査役(会)の視点から見たコーポレートガバナンス改革~現状の課題とより機能するためへの提言~」を公表したという記事が、経営財務3429号のニュースに掲載されていました。
CG改革が進む中で「取締役会と並んでガバナンスの一翼を担う監査役(会)に期待される役割・機能に関する議論が余り聞こえてこない」とし、「華々しい取締役会の改革議論の陰で,置き去りにされた感がある」ことを問題とし認識し、「監査役がその真価を発揮するためには何がなされるべきか」が検討されたものとされています。
そしてこ報告書の中では、「監査役選解任権の監査役会への付与」や「社外取締役に関する監査ガイドライン策定」等が提言されているとされています。
「監査役選解任権の監査役会への付与」がやはり気になるところですが、経営財務の記事ではあまり詳しく述べられていなかったので、原文を確認したところ以下の様に記載されていました。
① 監査役選解任権の監査役会への付与
先述のように、監査役、特に社内からの常勤者の選任に当たっては、事実上執行側にその権限があるといわざるを得ない。その結果、監査役は事案に懸念を持っても、会社側への配慮によって発言や事実確認を控えるといったことが起こりうることは容易に想像できる。また、会社側から見て「扱いにくい」監査役は、解任でなくとも重任をさせないといったことも理屈では可能である。
要は監査を受ける側が、同意の上とはいえ監査役を事実上選任できるという構造的な問題がある以上、監査役の独立性を幾ら強調しても実態との乖離は埋めることができない。
無論、監査役会に選任権を持たせても、例えば執行人事優先等で、社内からの適切な人材確保が行えるかという実務上の懸念はある。このため、取締役会は監査役会の意向に協力する旨の規定も併せて考慮される必要はあるであろう。
選任とともに監査役報酬も重要な課題である。報酬については通常は総会で承認された総額範囲内において、監査役が協議して決定する場合が多いが、これもまた、事実上は会社側の役員報酬体系の中で決められているのが一般的である。有用な人材を確保するためにも取締役や執行役員とは別に、監査役の職責を担うべき報酬体系が監査役会として策定されるべきである。いずれにせよ、現在の会社法の建て付けや実務慣行からすれば、監査役会への選解任権(株主総会への提案権)付与まで一足飛びに進むことは困難であるとしても、少なくとも、監査役の選解任について監査役会がより深く関わることにより、執行側と監査役会による相互のチェックが働き、監査役としても自覚と連帯が高まり、取締役会への発言力を高めていくことで、健全なガバナンスに資することが期待できる。
(以下省略)
(出典:「「監査役(会)の視点から見たコーポレートガバナンス改革」~現状の課題とより機能するためへの提言~ (公社)日本監査役協会関西支部 監査実務研究会 2019年8月7日 P12」)
監査役が置かれている状況は上記で記載されているとおりなのだと思います。また、「監査役選解任権の監査役会への付与」といっても、実際問題として実現は容易ではないということは理解されており、その上で、何らかの形で「監査役の選解任について監査役会がより深く関わる」ことが現実的な解として提言されています。
監査役会協会の提言なので、当然監査役という制度があることが前提となっていますが、個人的には、そもそも監査役という制度自体必要なのかという議論もあってしかるべきではないかと感じます。あるいは、社会が監査役に大きな期待を寄せるのであれば、大会社の監査役はすべて常勤監査役にするという選択肢があってもよいかもしれません。